よしだ

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幼い頃、大好きだった夏
病床で、窓越しに見た夏
十四歳、淡い恋をした夏
ふたり、氷菓を食べた夏

夏が嫌いだ

照りつける太陽も、
うるさいほどの蝉の声も、
生命の伊吹を感じさせる木々も、
むわりと体をつつむ湿気も、
青い青い空に浮かぶ入道雲も、
空に閃く稲光も、
雨が去ったあとの夕暮れも、

全部全部大嫌いだ

だってそれは昔、私の世界だったのだから!

置いてきた心たちと
変わってしまった全てがくるしい

あのころきらめいて見えた夏の日差しは
今私を痛めつける鋭い光になった

溢れんばかりの命の気配も、その輝きも
私にはもう外側から見つめることしか出来ない

頭も、瞳も、心も鋭く痛む、
だけど諦めきれない、
私の、わたしの、夏

「夏」

7/14/2025, 7:07:52 PM