「七夕」
ベガとアルタイルは
距離があるから
いつまでも お互いのことを
幻想抜きに よく見えるし
いつまでも お互いのことを
尊重して 大切にできている
あの距離は 必要な距離
つかず はなれず
お互いの方を向いて
いつまでも おしあわせに
「七夕」
「友だちの思い出」
この部屋の友だちには
笑顔を見せながら
ジリジリと
まるで植物が澄まし顔で
知らぬ間に逃げ道の蔓を伸ばすように
まるで時針が眠った顔で
知らぬ間に追手の分針から逃げるように
そう、目に見えぬくらいの速さで
ゆっくりと ゆっくりと
後ずさりをして
笑顔をみせたそのままに
眼の前の扉を閉める
そうして私はようやく
貼り付いた笑顔の仮面を下ろす
ほぅ と息を吐いて
この扉も違ったか と
あらためて次の扉を探す
おそらく私の居るべき部屋は
見つからないのだということを
知ってはいるが 気づかぬふりをする
寂しがり屋の私は
「友だちの思い出」とやらを
数えるために
また笑顔の仮面を被って
ドアノブに手をかける
「友だちとの思い出」
「星空」
人々の肯定と笑顔に囲まれて
自分のこころが自信に満ちている時は
私の上には無限に青空が拡がっている。
人々の否定と侮蔑に挟まれて
自分のこころが恐怖に満ちている時は
私の上には無限に暗闇が拡がっている。
しかしそうなって初めて
私の上に 小さな小さな光が
瞬いて 星空となっていることに気づく。
人々が私の存在を賞賛しようと
人々が私の存在を否定しようと
なにも変わらず 星空はそこにある。
ゴボゴボと音を立て
眼の前の何もかもを押し流す
土砂混じりのこの世の大河の流れとやらに
何を付き合ってやる必要があろう。
私の空が 何色であったとしても
私の空が 何もかたらなくとも
私の星が たとえ見えずとも
私の星は 静かにそこにあるではないか。
「星空」
「神様だけが知っている」
私がもう随分昔から
この世の仕組みに気づいていることを
過去の出来事が今を経由して
どの選択肢を選んでも
未来へと繋がっていることを
神様だけが知っている
なぜ何も仰らないか
それはまだ今が完結でも
人生の終点でもないから
だから神様の声を聞くまで 大丈夫。
だからあなたは知らなくても 大丈夫。
「神様だけが知っている」
「この道の先に」
いのちの道を歩む旅人よ
平坦に見える道は 罠を隠し
親切に見える老婆は おまえを喰らい
美しく見える花は 毒蛾の化身であり
無垢に見える栗鼠は お前を騙す
険しく見える山は 両手を拡げ
そっけなく見える老人は おまえを温め
ひっそりと生える草は 薬となり
雄叫びをあげる獣は お前を護る
人の世においては
尊敬を求めない者こそ 敬われ
美醜を求めない者こそ 美しく
競争を求めない者こそ 勝利し
呪詛ではなく 祝福を口にし
与えられるより 与えることを望む
自分のなんたるかを知り
他者を赦し いのちを尊ぶ者が
本当のつよさを手に入れる。
この道の先に
誰がいようと
何があろうと
自分が何ができるのか
自分が何を抱えるのか
何を求めて 何を置くのか
もしも はた、と戸惑い
その足が止まってしまった時
底力となって
私の一歩を歩みだす
ちからとなってくれるのは
私の軌跡
「この道の先に」