maria

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「友だちの思い出」


この部屋の友だちには
笑顔を見せながら
ジリジリと
まるで植物が澄まし顔で
知らぬ間に逃げ道の蔓を伸ばすように

まるで時針が眠った顔で
知らぬ間に追手の分針から逃げるように

そう、目に見えぬくらいの速さで
ゆっくりと ゆっくりと
後ずさりをして 
笑顔をみせたそのままに 
眼の前の扉を閉める

そうして私はようやく
貼り付いた笑顔の仮面を下ろす

ほぅ と息を吐いて
この扉も違ったか と
あらためて次の扉を探す

おそらく私の居るべき部屋は
見つからないのだということを
知ってはいるが 気づかぬふりをする

寂しがり屋の私は
「友だちの思い出」とやらを
数えるために
また笑顔の仮面を被って
ドアノブに手をかける



       「友だちとの思い出」

7/6/2023, 11:14:59 AM