maria

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4/17/2023, 1:31:04 PM

桜散る



さくらの花びら散ってくね。

くるまの中からみる景色

ランチタイムに会えたのに

ちっともこっちを見てくれない。
        隣にいるのに遠い人。

ルームミラーで後ろをみると




さくら並木が遠ざかる。  
       花びらたちが、踊るよに。

くやしいけれど離れられない。
        桜のようになれなくて。

らくに考えられたらな。桜みたいに潔く。

ちょうど信号赤になり
  横断歩道を花びらが
  キャッキャと渡る 右から左。

ルームミラーからごあいさつ
   さよなら、ありがと また来年


さてさて桜は上から下へ
くるりと廻っておちてゆく
らせんを描いておちてゆく

ちょっと不思議にきづいたかしら
「る」って言ったらわかるかな?

たてによんでね。
















4/16/2023, 3:38:22 PM

「ここではない どこかで」




3分と57秒。私の一番好きな曲


会社を出る前に彼にLINEして
未読なのを確認して

いつものように電車の改札を通って
イヤホンをつける。

電車がホームを滑り出す。
そしてわたしは無音の世界

シン、、、という静寂の中
自分の鼓動が耳奥に響く。

もう一度スマホを確認すると
やっぱり未読

次の駅についたらスイッチを入れよう。
ガタタン ガタタン  シュウウウ

ドアが開いてパラパラと降りていく人
電車内では座る人、眠る人、喋る人

そして私は無音の世界

次の駅についたら、スイッチを入れよう。
ガタタン ガタタン   シュウウウ

手元のスマホを確認するけれど
やっぱり未読

電車は駅についたけど
私だけがまた無音の世界。

自分の鼓動を聞きながらゆっくり歩いてバス停へ。
明るいバス停のベンチに腰掛けて
手元のスマホを確認するけれど
やっぱり未読・・・

そこでグズグズと
音楽のスイッチを入れる。
あなたのタイムリミットは
3分と57秒。

この曲が終わるまでに
あなたが私の耳元にまで来ないなら

曲が終わったときに伝えよう。

ねえ。もう待つのに疲れちゃった。
わたしをあなたから解放して。


そしてここではないどこかで
    私の関係のないところで
       勝手に幸せになってよ


3分と57秒 
私の一番好きな曲
それは一番悲しい曲

そしてわたしは無音の世界

未読のLINEがタイムリミットを告げる
 

4/15/2023, 5:23:54 PM

届かぬ思い



「ねえねえ、それでおばあさんの旦那さんはそのあとは?」

「その日遅くまで待ったけど帰ってこなかったの。」

だからずっと独り暮らし。 
もう一つクッキーはいかが? と
巨人のおばあさんは、
僕にはいささか大きすぎるクッキーを
目の前にゴトンと置いた。

僕の名はジャック。
僕が魔法の豆の木を伝って雲の上の巨人の城についたのは、昼前のことだった。

こんな大きな城には巨人が住んでいるに違いないと、
おっかなびっくり窓の隙間からリビングに入った時、
案の定、巨人がいた。年老いた女性で編み物をしていた。

女性は窓枠に立つ僕に気付くと

「あら。・・・迷子かしら?」

といった。
彼女にとって僕はハエトリグモくらいの
存在だったんだろう。
別に驚きもしなかったし、
何かで叩き潰そうと
追い回されることもなかった。
言葉が通じると知って、
地上の話を聞きたがった。

父さんが早くに財産を使い果たして
働かないので貧しかった僕のうちは
一日のうちに薄いスープと硬いパンを
一日一回食べられればいいほうだった。
ある日、母さんに言われてとうとう街まで牛を売りに行くことになり
途中で出会った魔法使いに魔法の豆と牛を交換してもらったんだ。
そんな身の上話をすると

「おなかが空いてるのね。」

そういって彼女は僕をソーサーに座らせ
ソーサーの中央にクッキーのかけらをおいた。
僕にとってそれは大層なごちそうで、
生まれてはじめての口いっぱいの食べ物に夢中になってかぶりつき
あの魔法の豆と牛を交換して正解だった、とこころから思った。

おかわりのクッキーまでもらって
おなかがいっぱいになった僕は
眠くなってきた。

「地上というのは地面が硬いんですって?」
ここは雲だもの。硬いというのが想像つかなくって。とおばあさんが訊ねる。

僕は
「このテーブルみたいな感じかな」
とコツコツと拳で叩いて見せて
あくびをしながら答えた。

「地上というのはずいぶん遠いの?」
雲の端からチラリとしか見たことがなくて。
すごく眠い僕は   そうだね、多分。
豆の木を登り始めたのが夜明け前だったから、と答えた。

「あなたのお父さんは元気にしているの?」

   なんでそんなことを聞くんだろう。
   とても眠いのに・・・。






「私の夫はね、もう随分昔に落ちたのよ」
雲の上から地上へね。」

    んーーー・・・? 
     眠ってもいいかな。
  話の続きは起きてからでも  

  ・・いいかなぁ・・・・・・



「うちの宝物を盗んだ泥棒を追いかけて、
豆の木を途中まで降りたところで」

「その木を盗人に切り落とされたの」

「私のところまで聞こえてきたあの音を一生忘れない。」



「そうなのね。
あなたのお父さんは宝を売ったお金を
早くに使い果たしたのね」

     夢の中で誰かが喋り続けてる。

おばあさんはふわふわと半分眠った僕を
掌に乗せると家の外に出た。
ゆらゆらと揺れて気持ちがいい。

僕の登ってきた豆の木のあたりまで来たようだ。僕のうちの真上くらいだろうか。

ふわふわする頭でおばあさんの声を聞く。

「私の思いはもう夫には届かない」
 
なあに?なんていった・・?

おばあさんは僕を乗せた方の腕をゆっくりと真っ直ぐ雲の隙間に伸ばし、

「お前を、盗人で人殺しのジャックの元へ 返してあげるよ。」

そしてそのまま掌を下向きに。

「さようなら。ジャックジュニア」

         僕  は ・・・




4/14/2023, 12:53:19 PM

「神様へ」


わたしがたねをまいたなら
草木が芽吹いておどりだす

わたしがみずをすくうなら
光があそびに来てくれる

わたしがうたをうたったならば
風がRHYTHMを刻みだす

わたしがねむりにつくときは
星たちみんなが子守唄

おはよう おやすみ またあした

かなしい さびしい あいしてる 

春には花が
夏には海が
秋には雲が
冬には山が

みんな私を待っている

わたしがもじをつづるのを
わたしがもじをつづるのを

けれどもわたしがつづったならば

そこはかみさまのゆうとおり

神の御心つゆしれず

まだ神様への片想い
まだ神様への片想い

4/13/2023, 10:49:11 PM

快晴

「サトルおはよう。今朝はいい天気よ。」

「いってきます」

母から見えないように
制服の背中の汚れをカバンで隠しながら
玄関をでた。
 
立川さんちと山口さんちのおばちゃんたちが角で立ち話をしている。

「サトルちゃん。おはよう。今から学校?いい天気で気持ちのいい朝ね。」

「おはようございます」

まだ小さい頃から僕のことを知っているおばちゃんたちだ。
一瞬だけ目を合わせて視線を落としながら
そそくさと横を通り過ぎる。
ズボンについたスニーカーの足型を腕で隠しながら。


晴れた日が「いい天気」だなんて
誰が言い出したんだろう。

こんな日は奴等が一層陽気になって
教室の床にうずくまってすすり泣く
僕の声をBGMに
僕の上で高笑いしながら激しく踊る。


校門のところに奴等がニヤニヤしながら
僕を待っているのがみえた。



だから僕はこんな快晴の日が嫌いだ

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