パワハラに負けて泣き寝入りしたまま会社を辞めた。
お先真っ暗の未来しか見えない。
泣きはらした私の目は誰にも見せられない。
かと言って、頼れる友達も彼氏もいない。
なぜなら、あの会社で働く仲間が私の全てだったから
親は「辛くなったらいつでも帰っておいで」
と言ってくれたけど、
あの上司に、この試練に負ける気がして帰れない。
疲れ果てたまま膝を抱えてボーっとしていると
闇のような夜の窓から
朝を知らせる一筋の光が入り込む。
音を立てない静かな夜明けは
「ゆっくり進もう」と私に優しく語りかけてくれた。
あの詩に出会うまでは私は自分の殻に閉じこもってた
人が苦手で視線を合わせるだけでも怖かった。
そんな私が殻を破る武器となったのがあの詩だった。
「この世界に悩みのない人はいない
みんな個性という名のコンプレックスを持っている
でもそれをみんなは受容して生きている
だから君も自分を卑下する必要はない
いつかきっと君が前を向いて懸命に歩き出した時
ある人が君に手を差し伸べ共に歩いてくれる
その時をゆっくり待っていよう
意外な時に神様がその人と出会わせてくれる」
私はその詩に出会って初めて
厚い殻を破るための破片を見つけられた。
それから、私は思い切って殻にそれを刺した。
破った今では人と視線を合わせて話すことができる。
他愛のない話で笑い合える。
そして、初めて恋というものに出会い、
愛し愛されることを学んだ。
それを教えてくれたのは大好きなあの人です。
私があの人と親密に話せるようになったのは
私とあの人が自分をさらけ出せるようになったのは
どちらも、あの詩がきっかけだと昨日知りました。
今まで背負ってきた経験の中で
私はたくさんの言葉をもらった。
暖かく優しい言葉、目に見えない愛言葉、
時々触れる冷たい言葉、怒りで飛ぶナイフの様な言葉
それぞれの言葉が、
オレンジ、ピンク、水色、黒の花ならば
それらを一つの花束として私は抱きしめる。
これからもその花を受け取ったらこの花束に添える。
永遠に残るこの花束を私は今日も抱きしめる。
誰かと心を通わせた証として。
別れたあなたに愛を求められ優しくされても
その言葉には
ガラス細工のような弱いアイコトバしか存在しない。
もう、私はあなたに「愛してる」を求めない。
あなたは私に最後のケンカで
「俺の理想を叶えてくれないヤツに興味はない」
と言ったから。それで、別れた。
ワガママなあなたより
今を懸命に尽くす友人らの方がカッコいい。
私に優しくしないで。
つなぎ止めるための氷砂糖のような愛なんて不必要。
会社の上司と駆け落ちした姉の行方を知りたくて
ある日。自分自身が探偵となって
申し訳ないと思いながらも姉の部屋に入ってみた。
何か手掛かりがあるかもしれないと思って
机の引き出しを開けると厚い手紙の束が見つかった。
差出人は男性の名前。たぶん、駆け落ちの相手だろう
消印の古いものから順に見ていくと
姉への恋慕が言葉で強く伝わってくる。
最新の手紙にこう書いてあった。
「君を忘れられないから、せめて最後に旅に出たい。
終わりのない、君の心を自分の胸に抱き続ける旅を」
私は慌てて手紙を元の場所へ戻し、家を出た。