ネジが外れたウサギ

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12/22/2024, 5:54:20 AM

私の地元は家がぽつんぽつんとまばら点在していて

その家々に囲まれるように田園が広がっている。

冬でも晴天の日は見晴らしがいい。

空が大きくて鳥も悠々とのびのびと飛んでいる。

その青い空に落書きをするように

飛行機が雲を描きながら通り過ぎる。


「明日は雨が降るだろう」


いつかの誰かがそう言ったのを思い出す。

もしそうならこの『絵』を切り取ろうか。

明日になればわかるし、未来の天気予報になる。


私は今日もまた何気ない空をスマホで撮る。

12/21/2024, 4:43:15 AM

地元の小さなスーパーでは

手づくりのパンを売っている。


日替わりで作られるコッペパンの中の具を

私は毎日楽しみにしている。

だから、焼き上がりを知らせるベルの音が

店内に響くと機嫌を損ねていても私の口元が緩む。


初めて買ったコッペパンの中はあんバターだった。

愛知出身の母が好きな味。

母と一緒にこのスーパーに初めてきたとき

母は子供のように目を輝かせ、

ひとつ息を吐いて、こう言った。


「あんバターはね、お母さんの母の味なのよ。

ただ、あんバターと一口に言っても母のは別格。

普通より少し強めの甘さのあんと

しょっぱいバターが相まって、いい塩梅を生む。

あの味を出すのは意外と難しい。

でも、もしこのスーパーと母の味が似ていたら

また買いに来ようね」


そう言ったあのときの母のほんわかした笑顔は

あんバターのあんみたいな甘い匂いがふわりとした。


今日もベルの音が響いた。

いつもより少し遅い時間。

手間のかかるコッペパンの具は新商品なのだろうか。

いや、改良した母の思い出の味のあんバターかも。

12/17/2024, 5:42:33 AM

風邪をひいて欠席しているあの子のことを

僕は詳しく知らない。

元気なときにクラスのやつらと話している場面が

記憶にない。


思い返せば、休み時間にあの子が読んでいた本は

いつも『成瀬は天下を取りに行く』だった。

成瀬のような女の子に憧れているのだろうか。

僕は『成瀬シリーズ』をいまだに読んだことがない。


あの子が復活したら成瀬を武器に距離を縮めたい。

綿矢りさの『蹴りたい背中』のにな川に対する

主人公の乱暴な気持ちとは裏腹に

僕の気持ちは前向きな好奇心だ。


放課後。本屋に寄って成瀬の本を買おうかな。

あの子とすれ違いにならないように

万全の防寒で風邪をひかないように注意しながら。

12/15/2024, 6:05:09 AM

クリスマスシーズンが始まった冬。

街路樹を飾るイルミネーションは

家族連れやカップルを優しく出迎える。

私みたいな独り身でも、

イルミネーションの明かりは温かい。

その輝きを遠く離れた友達にLINEで送る。

彼女から送られてきた返信には

サンタの格好をした猫のスタンプが

「きれいだね」と言っている。




昨日、「さよなら」を言ったあの人は

今頃、新しい誰かと一緒にこの優しい灯りの中を

「寒いね」とでも言い合って歩いているのかな。


イルミネーションは恋人たちのものと思っていたけど

灯りは人を選ばない。

いつかの冬は隣にあの人以上の誰かがいることを

切に願い、

イルミネーションを見て今日も一人たそがれる。

12/14/2024, 3:47:56 AM

親の愛を知らずに育ったあの子に

僕は何をしてあげられるのだろうか。


僕には両親がいて(普通が何かは知らないけど)、

素朴な愛を注がれて生きてきた。


そんな僕が愛を注いでもあの子は

真実だと信じてくれのか。

多分すぐには受け入れがたいだろう。


だから僕は温かいペットボトルのミルクティーで

心も体も暖めて欲しい。

小さすぎる素朴な愛だけど

段々と少しずつ大きな愛を注いでいくよ。


僕が両親にもらった愛よりも

違う意味を持つ愛を君に教えたい。


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