その日、学校で嫌なことがあって私は泣いて帰った。
家の玄関の前で必死になって
溢れる涙を止めようとしたけど、止まらない。
声を殺して流れる涙をただ、ただ袖でぬぐった。
「どうしたの?」
お母さんの不安を乗せた声が家の中から聞こえる。
私は精一杯の明るい声で「大丈夫、ただいま」と
元気よく答えた。
玄関の扉がゆっくり開いた時には
私は涙を抑えられていた。
でも、お母さんの顔を見た瞬間。
涙はまた私の気持ちを表現する。
悲しみの涙を見られたくなくて、
嬉し涙と思わせて、お母さんな抱きついた。
涙声で「今日、いいことあった」と嘘をつく。
親は私の気持ちをすぐに察してくる。
「泣かないで。
あったかいココアを飲みながら話を聞くね」
お母さんはそう言って私のランドセルを下ろして
上着を脱がせた。
私は手を洗い、お母さんのいれてくれたココアを飲み
全てを話すことができた。
お母さんは丁寧なアドバイスをしてくれて
明日への恐怖心が少し和らいだ気がした。
朝、布団から出ようとして寒気が飛び込んでくると
「冬が始まったな」と身に染みて思う。
そうなると
もう時間をかけた意地との戦い。
「もう少し、あたたまろう」
「仕方ない。起きて寒気と戦うか」
その両者がいつまでも頭を駆け巡る。
最後は後者になるけど、
昨日の夜更かしなどがあるとすぐには厳しい。
冬は、温かいもので癒されるのが一番だけど
その『温かいもの』が朝は布団なのだ。
ケンカの多い私たちだけど、私はあなたが好き。
手を繋ぐことが少ないけど、それ以上に心を繋ぎたい
私があなたの彼女でいられる間は
私はあなたに愛を注ぐことができる。
いちごのいないショートケーキに
パティシエは他のフルーツを代理に立てるけど
私には、いちごのようにあなたが必要。
私があなたを輝かせられるまで
私はあなたの縁の下の力持ちでいたい。
もう少しだけ猶予をください。
私はあなたのことをそれくらいの思いで好きだから、
まだ終わらせないでください。
今回のケンカの原因は
私が起こした言葉のすれ違いだから、ごめんなさい。
君が僕のそばにいたあの頃は
僕の愛情は全て君のものだった。
僕の喜びを自分のことのように笑ってくれる。
僕の寂しさを受け止めて冗談を言って笑わせてくれる
僕も君のことを自分のことのように
共に笑ったり、悲しんだりした。
二人でいるあの時間がダイヤモンドの原石だったとは
到底思えない。
君は最期に言った。
「私たちの思い出をもとに小説を書いて」
僕なんか詩でさえ書いたこともないのに
どうして小説なんか。書けるわけがない。
そう言おうとしたら、君は精一杯の声で言った。
「あなたなら書ける。
私はあなたの優しさが好きなの。
人のことを第一に考えられるあなたなら、
きっと私のできなかったことを全うできると信じてる」
そう、君は小説家だった。
あまり世には知られてないが、ファンレターもある。
君の遺志を受け継ぎ、
君とは違う自分なりのやり方で
僕たちだけの物語を書くことにした。
僕の愛情は今、君との物語に注がれている。
この小説はダイヤモンドになる。
そう思って原石であるあの思い出たちに
小説という磨きをかける。
いつかきっと誰かに読んでもらえると信じて。
けんか別れではなければ別れても恋の微熱は残る。
二人の間にものすごく楽しい思い出があって
一度でも、ものすごく激しいケンカの後でも
それを機に前より心を寄り添えられれば
別れの一言が
単なる「好きな人ができた」では微熱は続いてしまう
解熱剤は相手の「復縁したい」より
それを癒してくれる「君しかいない」という愛言葉。
そんな安易な解熱剤など存在しないけど
やっぱり微熱は
相手を忘れるかそれ以上の恋を見つけるかまで
ずっと残ってしまう