毎日同じ仕事の繰り返しで、
気疲れや睡眠不足の度合いだけが増えていく。
そんなつまらないことだらけ日々の中でも
私の好きなドラマや小説は、
観るたびに、読むたびに、どんでん返しを繰り返す。
つまらない毎日の中にも
面白いと思えるものに出会えれば
きっと光り輝くものがある。
仕事だって、頑張った分の給料という報酬がある。
だから私は、今日も少しだけ気を抜いて頑張ってみる
終電がなくなった夜中の駅のホームに、
懐かしい人たちと笑っている私がいる。
みんなと出会った高校の最寄駅。
楽しかったあの頃と同じ顔と馴染みのある制服。
「また会えたね」
「元気にしてる?」
「この前のドラマにお前の好きな俳優出てたよ?」
「マジで?見てなーい」
「内容はありきたりな恋愛ドラマだったけど」
そんな何気ない会話の中にぎこちない違和感がある。
みんなマスクをしていて、目が笑っていない。
でも、それ以外はあの頃と変わらない。
ただ、私たち以外に誰一人見当たらないことを除いて。
最近、仕事が忙しくて誰かと笑顔を話すことがなかった。
だから今のこの時間が永遠に続けばいいと思っている。
この不思議なくらい平和な景色が。
でも、いつかは終わりが来るのはわかってる。
目が覚めるまでにこの『今』を頭のDVDに記録しよう。
挫けそうになった時、このDVDを見て気力をもらう。
ありがとう、思い出させてくれて。
私には、共に笑い合える仲間がいることを。
オーバードーズをして意識が飛んでどこかに運ばれた。
目を覚ましたときには、薄いピンクの壁紙と白い天井に囲まれた、
落ち着いた色合いの部屋のベッドの上に寝かされていた。
ふと見ると、腕に点滴をしている。
ここは病室なのだろうか?
ぼやけて見える窓の向こう側は、
新鮮な雲ひとつない青空とお花畑が広がっている。
この景色を見て私は病院ではなく
どこかの別荘に連れて来られたのかと疑った。
でも、ずっとここにいてもいいと思っている。
居場所のないあの街にいて
自殺のつもりでオーバードーズを繰り返しても死ねないのなら
ここでこの穏やかな景色を見ながら何も悩まずに生きたいと。
そんなことを考えていると白衣を着た若い男性が顔を出した。
「お体の方はいかがですか?」
「だ、大丈夫です」
「よかった。君は薬の過剰摂取で、かなり心を病んでいたようです」
「わかっています。それよりここはどこですか?」
「ここは居場所のない子供からご年配の方々のための心の療養の病院です」
「どうして居場所がないとわかったんですか?」
「それは、君の眼を見ればわかります」
「眼?」
「はい。涙を枯らすほど泣きはらし、何かに怯えるその眼を見れば」
「私が怯えているのは…!」
「わかっています。ここが病院だと信じられませんよね」
「はい…」
「でも、大丈夫。この病院でリハビリをして退院した方は沢山居ます」
「そうなんですか?」
「はい。同じような悩みを持った彼らと話し打ち解け、
心の拠り所となる好きなものを見つけられれば退院できます」
その男性の、その医者の読み通り私はその病院でたくさんの仲間を持った。
そして、その仲間のご老人から高価なフィルムカメラを頂いた。
私はそのカメラで思い出のあの病室に救ってくれた医者と
数名の看護師、仲間を集めて集合写真を撮った。
退院後、私はオーバードーズから抜け出し
写真家の世界へと足を踏み入れた。
私は今、居場所のなかったあの街で自分しか撮れないものを探している。
暗いゲリラ豪雨のような心の日々は
この町と地続きしている目的地のように
いつまでも続くのだろうか?
もし、明日が来て雨が止んで晴れるなら
温かい陽の光で
私の奥底に眠るこの鉛は心の鉄分と化して
助けてくれると相違ない
そうなれば私は前に進める
そうなれば私は悪魔に立ち向かうことができる
私は祈り続ける
神様がいないとしても
まだ見ぬ明日は晴れることを
初めての彼氏だった。
ホストもどきのその人は、利己主義で浮気性だった。
最後のケンカが最後の会話になって
話し合いをしないまま別れた。
今はどうしているか知らないけど、
私はあの人に貢いだ分と同じくらいのお金を
今は自分に投資してる。
早く新しい恋がしたいと思って
職場で出会った人や他の場所で知り合った人と
仲良くしたけど実らなかった。
彼氏のいない今だけど、
このまま一人でいてもいいと思っている。
初めての男(ひと)が忘れられないから。
好きとかではなくて
思い出の一つとしてまだ記憶は生きてる。
Saucy Dogのシンデレラボーイが
永遠に頭の中でリピート再生されるだろう。
楽しかった思い出は、嫌な思い出を消してくれる。
脳のカメラで楽しかった思い出を撮って、
心の中で現像して残す。
だから、一人で生きる。
自分の趣味でバズれるように努力しながら。