暗いゲリラ豪雨のような心の日々は
この町と地続きしている目的地のように
いつまでも続くのだろうか?
もし、明日が来て雨が止んで晴れるなら
温かい陽の光で
私の奥底に眠るこの鉛は心の鉄分と化して
助けてくれると相違ない
そうなれば私は前に進める
そうなれば私は悪魔に立ち向かうことができる
私は祈り続ける
神様がいないとしても
まだ見ぬ明日は晴れることを
初めての彼氏だった。
ホストもどきのその人は、利己主義で浮気性だった。
最後のケンカが最後の会話になって
話し合いをしないまま別れた。
今はどうしているか知らないけど、
私はあの人に貢いだ分と同じくらいのお金を
今は自分に投資してる。
早く新しい恋がしたいと思って
職場で出会った人や他の場所で知り合った人と
仲良くしたけど実らなかった。
彼氏のいない今だけど、
このまま一人でいてもいいと思っている。
初めての男(ひと)が忘れられないから。
好きとかではなくて
思い出の一つとしてまだ記憶は生きてる。
Saucy Dogのシンデレラボーイが
永遠に頭の中でリピート再生されるだろう。
楽しかった思い出は、嫌な思い出を消してくれる。
脳のカメラで楽しかった思い出を撮って、
心の中で現像して残す。
だから、一人で生きる。
自分の趣味でバズれるように努力しながら。
友達に裏切られたあの日
泣きながら目をつぶって布団を被った
暗闇の中で幾度もシャウトした
私のシャウトの合間に
私の声ではない誰かの声で「ねぇ!」と呼ぶ声がする
目を開けると暗闇の中で
大人になった十年後くらいの私がいた
私より大人なのに波にもまれた彼女の瞳は澄んでいた
彼女は涙を溜めて私に訴えかける
「裏切られても、いつかはそれは謝罪に変わる。
裏切る理由はボタンのかけ違いから生まれる。
今はわからないだろうけど、
とにかく今は、めげずに学校へ通い続けて。
今の私はそのあなたの勇気で成り立っているの」
私はその澄んだ瞳にいつかはなれると信じて、
明日のためにまた宿題に取り組んだ。
地位とか信頼などを築き上げてきたものを吹き飛ばす
そんな嵐が来ようとも
私は私らしくまたレンガを積んでいく
逆境を乗り越えてこそ真の強い壁を創り
まっさらになった時こそ自分らしさを描こうと
私は思うんだ
いつだって、めげなかったときにこそ
嵐の後の虹は現れるから
「君さ、ヴォーカルをやってよ」
それが音楽フェスという今日の祭りのきっかけだ。
友達とたわいのない話をしている俺にその子、りんは
いきなりスカウトしてきた。
始めはただの逆ナンかと思った。
歌に自信なんてないし、
もっぱらの聞く派だから歌詞もろくに覚えてない。
バンドのライブに行ったことなど一度か二度くらい。
それなのに、りんはのちにわかることだけど
俺のポテンシャルを掘り当てた。
数日後、顔を合わせたバンドメンバーは全員女だった。
本名を伏せる代わりにニックネームで呼び合っているらしい。
りんも本名ではないと本人が言った。
俺はハルキという偽名を名乗った。
初めて入ったスタジオに入ったとき、
その場にいる楽器たちに圧倒された。
初めてだった。
ドラムのどっしりとした佇まいをこんな間近で見たのは。
「早速だけどハルキ、何か歌って?」
ギターのルリが言った。
でも、俺が覚えているのはJ-POPの有数の一番の歌詞とそのサビだけ。
それでもいいと彼女たちは口を揃えていった。
俺が適当に曲名を告げ、演奏が始まる。
本人のように思い切って歌える自分に歓声が上がった。
そして、満場一致でヴォーカルの担当が俺に決定した。
俺はりん達の足を引っ張らないよう必死になって練習した。
カラオケにも行ったし、バンドのライブの映像を見て真似をした。
インディーズのバンドのライブにも参加してイメトレもした。
最低でも週に2回はみんなで音合わせをした。
スカウトされ、バンドのヴォーカルという役割を与えられた三ヶ月後の初夏。
初めて音楽スタジオでルナが作詞、作曲した曲で披露した。
そのときの歓声に対する喜びに俺は達成感を感じた。
りんの本当の目的は、それではなかった。
その一ヶ月後の夏にオーディションを兼ねた音楽フェスに挑んだ。
結果は残念に終わったが、今までのどんな夏祭りよりも
この音楽フェスは俺にとっては、忘れられないお祭りだ。