木が揺れる
ザアザア ザアザア
草が揺れる
さわさわ さわさわ
供えた花が舞い上がる
祖母のために一等綺麗な芍薬を咲かせた祖父
子のために技術を磨き伝えた祖父
孫のために技術を捨て家に入った祖父
貴方が去って2ヶ月が経とうとしています
やっと貴方のいない風景が日常になってきました
やっと心が波立つことなく写真を見返せるようになりました
貴方の周りには花降る風景が広がっているでしょうか?
私はいつまで貴方の上に花を降らせることができるでしょうか?
有名な歌のように、風となり日常を彩る音になっていたならば、墓に立った私を撫でてください
もし、泣きそうならば昔のように背中を叩いてください
いつかそちらに行った時、たくさん話を聞いてください
では、またいつか
追伸 そろそろ夢枕に立っていただけると、貴方の孫娘は泣いて喜びますのでどうかよろしく
明日を君と生きれたら
それはとても、贅沢なこと
薄情者だ
あんなに悲しかったのに
あんなに忘れたくないと思っていたのに
もうじいちゃんの笑顔が思い出せない
もう、じいちゃんの声が掠れている
癒えるためにひとは忘れるという
じいちゃんを忘れることが癒しならこの悲しみはなんだ
片親だった私は、働く父の傍で祖父母に育てられた
あの思い出たちが、朧げになっていくのに、これが癒しだというのなら神は何て残酷なんだろう
そのくせ後悔はいつまでも忘れさせてくれない
薄情者だ、私も、神様も、みんなみんな薄情者
幼い頃、ドラマで火葬場の煙を「あの煙がおじいちゃんなんだよ」って言っていたのを覚えている。
でも実際は煙なんて出ないし、煙がおじいちゃんな訳でもない。
大人になるにつれて私はそういうものだと受け入れていた。
窓の外は雲が空を覆っていて、あと1時間後には雪の予報に変わるらしい。
(あの空に煙が立ち上っていれば、本当なのかもなんて考えられたのに)
雪が降る頃には、私のじいちゃんは骨になって出てくる。ガンで溶けていると言われたのに拾えるんだろうか。
今頃一緒に入れたタバコを心置きなく吸いながら、上で大好きな柿ピーを食べているに違いない。
入院しなければ...退院の希望を出していれば...
頭を占めるのは無数のたらればと、それを否定する言い訳。
雪がやみ、曇りが晴れ、草木が芽吹く頃には気の落ちどころとやらを見つけられるだろうか?
外ではもうチラチラと雪が降り始めようとしていた。
ありがとう
だいすきだよ
もっとたくさん言えばよかった
赤ちゃんのようにわからない言葉を話す姿から目を背け、細くなった手を、足を温めようと擦り合わせる
気恥ずかしかった
うざったいとさえ思っていた
だいすき
私の声は届いているのかな
本当に私だってわかっているのかな
でも、自己満足と言われてもいい
毎日伝えるよ
ありがとう
ずっと、これからもだいすきだよ
届いてほしい、たとえ一方通行だとしても──
2025 2-18 手紙の行方