みんな僕のことが嫌いで、僕もみんなが嫌い。
嫌いという感情を受け取り続けた僕にとって、君の存在は太陽みたいに輝いていた。
君が僕にしつこく話しかけるから。僕の前でおかしなことをするから。僕に助けを求めるから。絆されて、心を許してしまった。
君のとなら、こんな人生すら笑い飛ばして生きられる。そんな気がしたんだ。
学ランに身を包んだ青年は。教室の中、ワイワイと騒ぐグループのただ一人を見つめる。その人の声に、動きに全神経を集中させて、1秒たりとも意識を逸らさない。
僕と違って、君には友達が沢山いる。君の人生は僕の何十倍も濃くて、何十倍も豊かなんだろう。
それを考えるたび思う。
君の中で、僕は何番目?。
僕にとっては、君が世界で一番なのに。
「今日はね、お姉ちゃんのお祝いなのよ」
母から何度も聞かされた。3月3日は姉の為の日。俺はそれを横目に見てるだけ。口には出さなかったけど、俺はカラフルなひなあられを食べてみたかった。
「……」
そんな記憶を、21になった今。深夜のコンビニにて思い出した。
3月4日、セールのカゴにドカドカ入れられたひなあられ。幼少の頃憧れたものがこのザマとは、なんだか複雑な心情である。
まぁ、安いしと。袋を一つ手に取って、酒と共にレジへ向かった。
会計を済ませ、足早に家に帰って袋を開ける。1粒だけでも食べたかった夢の食べ物が、ひと袋丸々あると思えばなんだか心踊った。
ピンク色を手に取り、口へ入れる。米の素朴な味に、ほんのりと感じる砂糖。
「……あんま美味くねえ」
こんなものか。自分の中で、憧れやら何やらが風船みたいにしょぼくれていくのがわかった。一つ一つ口にほおるのが億劫になり、ザラザラと袋を傾け一気に頬張る。砂糖が甘ったるくて仕方なかった。
俺はかつての夢をゴミ箱に捨て、さっさとタバコに火をつけた。
肉が焦げる匂いがした。
人の意思によって破壊し尽くされた土地には死骸ばかりが転がり、かつての光景はもう思い出せない。
男は自陣の生存者を探す為歩いていた。生物の命を散らしてきた銃を手に、戦場だった場所を歩く。
「見逃してくれ」
見つけたのは同年代くらいの敵であった。足を怪我しているようで、容易く逃げられるような状態では無い。
「家族が、妻がいるんだ。必ず帰ると、約束したんだ……」
敵は地面に頭を擦り付け、「頼む……」と震えた声で縋った。代償を要求されればなんだって差し出す。だから……
それを見下ろしていた男はその場にしゃがみ、
「俺、身代わりなんだよ」
「……」
「弟がさぁ、この戦争に駆り出されそうになってたんだよ。……けど、そんなのさ、見てるだけとか無理だろ?」
友達に語りかけるような、明るい口調で話し始めた。それも戦地には似合わぬ、穏やかな笑顔で。
「交渉したよ。俺が代わりに全部やるからって。だから俺は、殺すよ。お前も」
「、、ぁ、待っ――」
「意味のある死だぜ。よかったな、奥さんも多少は浮かばれる」
敵の言葉は銃声でかき消された。男は動かなくなった肉塊を蹴飛ばして、再び戦地を歩く。
「……敵に縋ってんじゃねぇよ。縋るなら神にしとけって。俺みたいに」
男には日課があった。朝と夜、暇な時間に神へ祈るのだ。彼は宗教の信者では無く、これは戦争が始まってから習慣となったものである。
毎日、瞼を閉じて祈るのだ。
奇跡を起こしてください――と。
この戦争を生きて、再び平和な日々に戻れる確率は……それこそ、奇跡と呼べる確率だろうから。