「今日はね、お姉ちゃんのお祝いなのよ」
母から何度も聞かされた。3月3日は姉の為の日。俺はそれを横目に見てるだけ。口には出さなかったけど、俺はカラフルなひなあられを食べてみたかった。
「……」
そんな記憶を、21になった今。深夜のコンビニにて思い出した。
3月4日、セールのカゴにドカドカ入れられたひなあられ。幼少の頃憧れたものがこのザマとは、なんだか複雑な心情である。
まぁ、安いしと。袋を一つ手に取って、酒と共にレジへ向かった。
会計を済ませ、足早に家に帰って袋を開ける。1粒だけでも食べたかった夢の食べ物が、ひと袋丸々あると思えばなんだか心踊った。
ピンク色を手に取り、口へ入れる。米の素朴な味に、ほんのりと感じる砂糖。
「……あんま美味くねえ」
こんなものか。自分の中で、憧れやら何やらが風船みたいにしょぼくれていくのがわかった。一つ一つ口にほおるのが億劫になり、ザラザラと袋を傾け一気に頬張る。砂糖が甘ったるくて仕方なかった。
俺はかつての夢をゴミ箱に捨て、さっさとタバコに火をつけた。
3/3/2026, 9:40:11 PM