遠い空の向こう あいの風が吹き抜ける
溢れんばかりの水は やがて種を芽吹かせ
照りつける太陽の下 大輪の花を咲かすだろう
赤き情熱 静かなる青
弾ける黄 ぬくもりの橙
尊い紫 ゆめを描く白
目に映るすべてが大切な輝きを放ち
おなじものはひとつもないと歌う
献げる花束に愛を
太陽よりもおおきく あたたかな温度で
暗転 背筋から這い上がる愉悦
締めつけるような渇きが溢れて
蜂蜜のようにとろり甘く
琥珀色に吸い込まれるように
反転 白紙の上の物語は空虚
影よりなお仄暗い歓びに満ちて
蜘蛛の糸の如き救いは刹那
ふつり解けて空に立ち昇る
地を飛ぶように空を這いずり
唾棄した踏み台に足をかけて
祝福のゆりかごが揺れる
穏やかな海を超えたその先で
はじまりを告げる鐘が鳴る
宙に浮く足はふらり彷徨って
迷路をくぐり抜けた向こうがわ
やがてやわらかな土を踏みしめる
最果ての門が開かれる
海を越え 山を越え 遠く とおく
おわりの鐘の音を聴きながら
航海を終えた老者はねむる
いずれ生まれる新緑(いのち)を言祝ぐために
ガラクタのような世界を睥睨し
くだらない理想に唾を吐く
誰かの罪を裁くように わたしの罪もまた等しく
正義の名の下に討ち滅ぼされるのか
天秤の上の欲と正義は揺れ動き
やがて 飽くなき欲の前に正義は燃え落ちる
それはきっと 罰という名の香辛料
呪いを吐いてはナイフを突き立てて
いつかは枯れる花を愛でてなお
仮面の下の焔は燃え盛る
罪なき楽園の扉は固く閉ざされて
原罪の前に 誰もが膝をつく
地獄の釜の中 咎人は踊り狂うのだ
その瞳に宇宙(そら)を閉じ込めて
世界に溢れる星は雨になる
退屈な日常は秒針を眠らせて
ひとりきりの世界(いえ)で
ふるり そっと寝息をたてる
ささやかや棘が胸を刺す夜
上弦の月がやわらかく包んで
まるで深海の底でたゆたうように
はるか遠くの ほほえむ陽だまり
窓から見えるいつかの空(あお)が
流星になって会いに行く