柱時計の針を取ると、それは鋭利な刃物のようになっていた。
「これが今回の事件の凶器です!」
探偵は意気揚々と断言する。
皆が「おおー!」とざわめく中、探偵は内心、ほっと息を吐いた。
実はこれは探偵が自分の推理を成り立たせるために用意したものなのである。
それがバレてないことに安堵した。
「いえ、凶器はそれではありません!」
そう言ったのは容疑者Aである。
「なぜです?」
探偵は訝しんだ。
「私がこの事件の犯人だからです!」
真犯人が名乗り出たことに、探偵は冷や汗をかく。
さぁ、どうする、探偵!?
それを見た瞬間、惚れてしまったのだ。
今、絶対に入手しなければ後悔すると確信する。
だから、今日もできる限り訴え続けるのだ。
「お母さん、買って、買ってーー!」
「あんた、それ、昨日もやってなかった?」
ファーストキスはレモン味だという。
だからって、とにかくレモンを食べたり、唇にレモンを付けたりして準備するのは違うと思う。
味が似てるからと、梅干しで代用するのもやめて欲しい。
これじゃあ、今日のデートも、キスしづらいじゃないか。
「1000年先も、いや、それ以降も、ここは人間との関わりのない、平和なところにしたい。
だから、見守ってくれないか、ルイス?」
人間たちの住むところから離れたこの地で、あのお人好し馬鹿の魔族は、人間嫌いの俺にそう言って笑う。
「人間が本当にここを放っとくと思うか?」
俺は顔を顰めた。
「全くそう思わない」
「おい」
「けど、人間は入って来られない結界を造ったし、しばらくは大丈夫だと思う。
襲われても放っとけば、あっちも諦めるだろう」
呑気な馬鹿に俺はイライラする。
人間の欲深さは竜である俺の想像を超えていた。
そんな人間なんて害しかもたらさないから、滅ぼした方がいいに決まっているのだ。
「ルイス、君が人間ごときに労力を割くなんて、徒労をする必要はないよ」
人間に対する侮蔑を隠さない目を見て、俺ははっとする。
そうだ、こいつも人間が嫌いだった。
「私たちは人間なんかが絶対成し遂げられない、平穏な場所を造るんだ。
だから、種族関係なく受け入れるし、仲良くできるよう努力する。人間と違ってね」
――そう決意を示した初代国王シリウスが造った国、ヒオン国はもうすぐ建国1000年を迎える。
様々な異種族が暮らすこの国は、諍いが全くないとはいえないが、概ね平和だった。
「……本当に1000年持ったな」
俺はシリウスの墓の前で笑った。
魔族の寿命は1000年。当時300ほどだったシリウスは、すでに帰らぬ人となっていた。
「お前の理想がどのくらい続くか、もう少し見守ってやるよ。
だから、あの世で待ってろ」
そう言うと、俺はヒオン国宰相の仕事に戻るために友人の墓の前から去った。
「『あなたを忘れない』が花言葉の勿忘草対、忘れっぽくなるというミョウガ!
さぁ、勝つのはどっちだ!?」
……なんの対決なんでしょうね?(←こんなのしか思いつかなかった)