「ここからの空が一番綺麗」
私はお気に入りの場所が何ヶ所ある。
でも今いるここは一番景色の綺麗な場所。
日によって書くものは違う。
今いる場所を背景に何かを描く、それは変わっていない。
「今日はもっと視野を広くしよう」
少し離れた視点を描くことにした。
何時間もかけてようやく描けた。
朝方に、
座ってジュースを飲んでる少年と隣で楽しそうに話す少女。
昼に、
何もせずにただ座ってるサラリーマンとその人に菓子パンを渡す同期。
夜に、
上を見あげてどんな表情をしているか分からない高校生。
―――そして
明け方に、
スケッチブックと色鉛筆を手にし縮こまって絵を描いている高校生。
4つの違う時間帯を同じ紙に描きあげた。
私は空を見ると、色々な情景が浮かぶ。
他の人にはきっと思いつかない。
思いつく人もいるだろうけど。
でも一番に心に浮かんでくるのは
〝ただ平凡な色々な日常〟であった。
私はそれを描き続ける――――――
「ねえ、君ってさ」
急に話しかけられた私。
「なんですか?」
「明日暇?もし暇だったら一緒に出かけないかい?」
…みなさんに言っておきます。初対面なんですけれど。
「結局来てしまった」
駅前で集合と言われた。思ったより早く着いたようだった。
「ごめんごめん。待ったかい?」
「いいや。大丈夫、ところで今からどこ行くの?」
「ファミレス行って、映画みて、景色みながら歩く」
なんだかデートみたい、そう思ったけど口には出さなかった。
ご飯は美味しかったし、映画も良い話だった。記憶をなくした少女が少年と死ぬまで生涯を共にする物語だった。
「最後、どこに行くの?」
「…ついてきてね。離れないでよ」
「うん」
彼は前を進んでいく。
次第に視界を埋めたのは無数の墓。
綺麗、そしてなんだか懐かしい気持ちになった。
「凜々…」
私の名前。彼は呟いた。
「もう」
〝終わりにしよう〟
「…え?」
「もう、記憶をなくすなんて勿体ないなあ…今日はデートのつもりだったんだよ」
…私は思い出した。彼とは恋人だった。
「あの日、階段から真っ逆さまに落ちて残酷な姿になった君を見て現実かどうか分からなくなった」
「……………」
「その次の日本当はデートだったのに、幸せとは逆の葬式だったなあ」
「羅兎…」
彼の名前。私は呟いた。
「今日のデートに満足してくれた?…君には幸せな最後で成仏してほしかったんだ」
私は元々幽霊だったのだ。それにも気づかずにデートなんかしていて…
「凜々は悪くないよ。僕はあの時の僕が憎いよ。なんで助けれなかったんだろうって」
声が聞こえてるのはきっと彼だけ。
「……羅兎、今までごめん。今日は、とても幸せなデートだったよ。…今度はもっと良い人が見つかるといいね」
2人は同時に呟いた。
〝〝終わりにしよう〟〟
1人の少女が天へ昇り、1人の少年が地を歩いていった―――――――――
私は昔、友人を亡くした。
交通事故で目の前で亡くなった。
今でも鮮明に覚えている。
「学校疲れた…」
たまに思い出して気分が沈むことはよくあることだ。もうあまり気にしていない。
下校する生徒がたくさんいる。バスで帰る人や駅まで行く人。自転車の人だって…
「!?」
道路へ飛び出した自転車は車にぶつかりそうだ。
「危ない!」
体当たりをし、直で当たらないようにずらした。自転車と少し細身の男性が横たわっている。
周りがザワついている。
「いってえ……あんた、大丈夫か!?」
「私は大丈夫です!立てますか?」
「…手を貸してくれ…体中が痛いんだ」
手と手が触れる。細身だけど手からは男性らしさを感じた。
「あの、病院とか…お金もできれば」
「あ〜?いいよいいよ!命の恩人に金は要求しないしねー!マジでありがとう!」
彼は自転車で颯爽とかけていった。さっきのざわめきはなぜか止まりいつも通りの日常に戻っていた。
「くるしい…なんで…」
最近体調を崩すことが増えた。毎日「消えたい、死にたい」という程。今も保健室で1人悲しみに暮れている。
涙が止まらない。突然、
私は1つの思想に留まった。
「この世から消えてしまえばもう苦しくないんだ」と。
階段を上り、屋上を目指す。
重い足取りをとりながら。
授業をサボっている生徒が何人か廊下に座っていた。なんだか見覚えのある顔があって、なんてことをしているのだ?と思った
私も人の事いえないけれど。
風が私の体を通っていく。
靴を脱ぐ。柵を超える。
綺麗な景色だ。
足を空中へ晒した瞬間、
「やめろ!!!!!」
手を掴まれた。
「…あなた、あの時の」
「お前には借りがある!俺の命を救ってくれた!」
「でも私、消えたいんだ」
「…ダメだ…。そうやって昔、俺は友達をなくしたんだ!あの時は!救えなかった!落ちていくあいつを…見ていることしか出来なかった」
気づいたら、私は涙を零し続けていた。
「お前には!生きていて欲しい!」
そう言われた瞬間、体が持ち上げられる。
床に倒れた私は、立てなかった。もし死んでいたら、永遠とこの人は泣いていたのだろう。そう考えて。
「生きていてよかった…!」
泣いている。彼の顔はぐしゃぐしゃだ。
「…立てるか?一緒に保健室に行こう」
手を伸ばされる。
少し恥ずかしかったが、心地よかった。
私達は手を取り合って、生きていた。これからも、2人――――――――
手をとりあって。
「√3です」
「正解。今紗綾が言った通り…」
私はこのクラスで一番の優等生。
そう確信している。
期末試験は毎回一位。親も妹もそうだった。心強い遺伝が引き継がれたもんだ。
「初めまして〜八名でーすよろしく〜」
…転校生。なんの突拍子もなく来た。
明らかにチャラそう。金髪で制服は着崩してる。
「はいよろしく。席は紗綾の隣な。」
は?
「よろー明らかに真面目そうだな。あまり固くなんなくてもいいよ。香露八名。」
「よろしく。私あまり人と関わらないから」
こういう人苦手だ。無理。
「さみしーねえ」
「あっそう」
期末試験が終わった。今回も1位だろう。
ただ、数学の最後の問題が少し自信がない。自信をなくしてはダメだ。
「えー廊下に順位を貼っておく。あまり騒がないように」
とか言われるけど毎回騒がしい。
「おーおー優等生さん。順位見に行かないの?」
「人が多いから」
「じゃあ後で俺と2人で行こうよ。俺も見てない」
「別に」
「やったー」
今、私は絶望感に包まれてる。
「は?」
信じられない光景が目の前にある
【1位 香露八名 499点】
【2位 有都紗綾 498点】
「よっしゃ!今回めっちゃ頑張ったわー」
「ちょっと聞いていいかしら?」
「はい?」
「カンニングでもした?」
「はああ!!??してないよ!」
信じ難い。
「ねえ、今日家見せて。急だけど。人格でも入れ替わってるのか心配になる」
「あー?……別にいいけど」
…放課後。来たは良い。
「めっちゃ綺麗…なにこれ」
「俺の家ー」
「嘘…」
勉強道具がありえないぐらい揃っている。
参考書もずらりと並んでる。私と同等ぐらい。
「…?」
私は違和感を覚えた。なんだか、やっぱりキャラに合わない、と。
「ねえ、八名…」
「おーどした?」
「あなた、本当にそのすがたなの?」
「…勘が鋭い、ですね。紗綾さん」
彼は、本当の姿を見せた。
黒髪、肩にかかるぐらいの。
メガネ。紺の枠が似合ってる。
制服は、ピシッと着ている。
「やっぱり、そういう人なのね」
「はい。でも、今の姿の方が落ち着きます。」
「……私ね、」
今までのことを話した。
優越感に浸っていたけど不安しかなかったこと。
劣等感が身を離れないことを。
「あなたにであって、私には劣等感をぶつけられたわ。あの順位を見てこの世界から消えたいと思ったもの。」
「重いですね。実は僕、劣等感に浸ってたんですよ。でも優越感というのが身を離れなくて、どうしようかすごく悩みました。」
「私たち似たもの同士ね」
「仲良くしてくれる気になったんです?」
「ええ。仲良くする代償に毎日勉強を教えてね。」
「もちろんです。今度は同率1位を。」
「いいや、あなたを引きづり落としてみせるわ。」
〜優越感に浸った私と劣等感に浸った彼〜
これまでずっと、私を支えてくれてありがとう。
これまでずっと、仲良くしてくれてありがとう。
これまでずっと、私と付き合ってくれてありがとう。
これからはずっと、あなたの好きな人を幸せにしてね。
応援してるよ。
でも、私のものにしたいっていうこの重い愛の感情は、
これまでも、これからもずっと、変わらないと思うな。
これからずっと、私は片思いをするよ。
【あの人が両想いになれますように】
ネットの占いに、そう書き残した。
すごく苦しかったけど
あなたに幸せになって欲しい。
でも、これまでずっと
私だけのものだったの。
でもこれからは
あの人のものになれるように
頑張ってね。
これからも、片想い頑張ります。
〜これまでずっと〜