「√3です」
「正解。今紗綾が言った通り…」
私はこのクラスで一番の優等生。
そう確信している。
期末試験は毎回一位。親も妹もそうだった。心強い遺伝が引き継がれたもんだ。
「初めまして〜八名でーすよろしく〜」
…転校生。なんの突拍子もなく来た。
明らかにチャラそう。金髪で制服は着崩してる。
「はいよろしく。席は紗綾の隣な。」
は?
「よろー明らかに真面目そうだな。あまり固くなんなくてもいいよ。香露八名。」
「よろしく。私あまり人と関わらないから」
こういう人苦手だ。無理。
「さみしーねえ」
「あっそう」
期末試験が終わった。今回も1位だろう。
ただ、数学の最後の問題が少し自信がない。自信をなくしてはダメだ。
「えー廊下に順位を貼っておく。あまり騒がないように」
とか言われるけど毎回騒がしい。
「おーおー優等生さん。順位見に行かないの?」
「人が多いから」
「じゃあ後で俺と2人で行こうよ。俺も見てない」
「別に」
「やったー」
今、私は絶望感に包まれてる。
「は?」
信じられない光景が目の前にある
【1位 香露八名 499点】
【2位 有都紗綾 498点】
「よっしゃ!今回めっちゃ頑張ったわー」
「ちょっと聞いていいかしら?」
「はい?」
「カンニングでもした?」
「はああ!!??してないよ!」
信じ難い。
「ねえ、今日家見せて。急だけど。人格でも入れ替わってるのか心配になる」
「あー?……別にいいけど」
…放課後。来たは良い。
「めっちゃ綺麗…なにこれ」
「俺の家ー」
「嘘…」
勉強道具がありえないぐらい揃っている。
参考書もずらりと並んでる。私と同等ぐらい。
「…?」
私は違和感を覚えた。なんだか、やっぱりキャラに合わない、と。
「ねえ、八名…」
「おーどした?」
「あなた、本当にそのすがたなの?」
「…勘が鋭い、ですね。紗綾さん」
彼は、本当の姿を見せた。
黒髪、肩にかかるぐらいの。
メガネ。紺の枠が似合ってる。
制服は、ピシッと着ている。
「やっぱり、そういう人なのね」
「はい。でも、今の姿の方が落ち着きます。」
「……私ね、」
今までのことを話した。
優越感に浸っていたけど不安しかなかったこと。
劣等感が身を離れないことを。
「あなたにであって、私には劣等感をぶつけられたわ。あの順位を見てこの世界から消えたいと思ったもの。」
「重いですね。実は僕、劣等感に浸ってたんですよ。でも優越感というのが身を離れなくて、どうしようかすごく悩みました。」
「私たち似たもの同士ね」
「仲良くしてくれる気になったんです?」
「ええ。仲良くする代償に毎日勉強を教えてね。」
「もちろんです。今度は同率1位を。」
「いいや、あなたを引きづり落としてみせるわ。」
〜優越感に浸った私と劣等感に浸った彼〜
7/13/2023, 12:01:24 PM