「ねえ、君ってさ」
急に話しかけられた私。
「なんですか?」
「明日暇?もし暇だったら一緒に出かけないかい?」
…みなさんに言っておきます。初対面なんですけれど。
「結局来てしまった」
駅前で集合と言われた。思ったより早く着いたようだった。
「ごめんごめん。待ったかい?」
「いいや。大丈夫、ところで今からどこ行くの?」
「ファミレス行って、映画みて、景色みながら歩く」
なんだかデートみたい、そう思ったけど口には出さなかった。
ご飯は美味しかったし、映画も良い話だった。記憶をなくした少女が少年と死ぬまで生涯を共にする物語だった。
「最後、どこに行くの?」
「…ついてきてね。離れないでよ」
「うん」
彼は前を進んでいく。
次第に視界を埋めたのは無数の墓。
綺麗、そしてなんだか懐かしい気持ちになった。
「凜々…」
私の名前。彼は呟いた。
「もう」
〝終わりにしよう〟
「…え?」
「もう、記憶をなくすなんて勿体ないなあ…今日はデートのつもりだったんだよ」
…私は思い出した。彼とは恋人だった。
「あの日、階段から真っ逆さまに落ちて残酷な姿になった君を見て現実かどうか分からなくなった」
「……………」
「その次の日本当はデートだったのに、幸せとは逆の葬式だったなあ」
「羅兎…」
彼の名前。私は呟いた。
「今日のデートに満足してくれた?…君には幸せな最後で成仏してほしかったんだ」
私は元々幽霊だったのだ。それにも気づかずにデートなんかしていて…
「凜々は悪くないよ。僕はあの時の僕が憎いよ。なんで助けれなかったんだろうって」
声が聞こえてるのはきっと彼だけ。
「……羅兎、今までごめん。今日は、とても幸せなデートだったよ。…今度はもっと良い人が見つかるといいね」
2人は同時に呟いた。
〝〝終わりにしよう〟〟
1人の少女が天へ昇り、1人の少年が地を歩いていった―――――――――
7/15/2023, 2:52:06 PM