青年はまたやってしまったと少年の顔を見て思った。
今回の依頼は人々に迷惑をかけている原因の究明、解決であった。
少年と依頼のあった町へ行き情報収集し、目星をつけたまではよかった。
問題はそのあと。
いざ本拠地につき制圧した際、少年が危なかったので青年がかばったのである。青年が怪我をすることによって。
少年は大切な青年が自分のせいで怪我を負ったのが悔しいのもあるが、当の背年が少年に怪我がないことに安堵するだけで自分に無頓着で。
どう分からせてやろうかと、少年が悶々と考えていると青年が眉を寄せすまなそうに誤ってきた。自分が未熟なばかりにと。
それを聞いてこいつには言葉は伝わらない、なら行動するのみと腕を掴みなら今日は自分と一緒にいてくれ!と言い引きずっていった。
少年は互いに大切なのにままならないなと思いながら。
青年は少年の気が済むならと、なすがままついていく。
食堂で行われた痴話喧嘩に、彼女は仲がいいのねとお茶を飲みホッと一息ついた。
昔から俺はどうしてそうなる!?と、よく言われる。
よくよく話を聞いてみると、相手のことはよく見ているが自分に対する気持ちの察しが劇的に悪くなると言われた。
俺としてはよくわからなかったがそうなのだろう。
それを思い出したのは少年に対しても、同じようなことをやらかしてしまったと気づいたからだ。
いつもなら相手のことを理解し動けていたのにそれができない。相手が求めていることは理解できるのに、求めているのが自分の気持ちだからなおのことどうすればいいのかわからない。
困惑しきった俺に少年は苦笑し、いつも他人を気にしすぎるから己がわからなくなるのだ、と言われた。
そんなつもりはなかったのに。ただ、俺は彼の笑う顔が見たいと思っただけだと少年に言った。
何気なくさらっと言うでない!と少年に顔真っ赤にしながら言われてしまった。
けれどそのあと少年の機嫌は上がったので良かったと思う。
青年よ、そういうとこだぞと突っ込まれること間違いなしなことを考えていた。
それを見て言いようのない不快感が心の中を占めた。
少年は上機嫌であった。最近なかなか一緒に行動ができていなかった青年と久々に街に遊びに行けるからである。
いつもなら一緒に町へ行くのを用があるからと、青年とは一時別れ待ち合わせていた。
行きたいお店、食べたいものを想像して上機嫌で待ち合わせていたら少し先で後姿の青年を見つけた。
声をかけようと近づこうとしたら、青年は女性に声を掛けられていた。ナンパをしているのであろう、青年を見る目は熱い。
断られることはないという自信が見え隠れしている。
青年はそんな視線に気づかず離れようとしていた。女性は引き留めようと熱心に見つめ何かを言っていて。
言いようのない不快感が心の中を占め、不快感を振り払うように青年に近づき声をかけた。
青年と女性はこちらに視線を向け、少年を見た。
女性を一瞬睨みつけるように見た少年は青年に早く行こう!と、腕を掴みその場から離れた。
少しして離れた場所で、少年は青年の腕を放し青年にふくれっ面を向け遅い!と言い放った。
青年は申し訳なさそうにすまないと言いながらじっと、少年を見た。
あまりに見つめられると恥ずかしくなるもので。視線を振り払うようにさあ、行くぞ!と青年の裾を掴み、行きたかった店の話をしながら歩きだした。
青年は少年を見て少し笑いああ、行こうかと、答え歩き出した。
あくる日、依頼を完了し部屋に戻った際のこと。
それに気づいたのは青年であった。背中に伸ばし三つ網をしている髪が先の戦闘で解けかけていたので。
少年に指摘すると、少し考え青年に結んでほしいとせがんできた。
あまりに期待したまなざしで懇願するので流されてしまい、ついうなずいてしまった。
が、いざ目前に控えると過去のことを思い返す。
義妹にも同じように髪を結いでほしいと言われたことを。
幼かったこともあり当時四苦八苦しながらなんとか終えたが歪な形で。
やり直そうとしたがこれでいいと、笑顔で言われてしまい直せなかった過去。
かなり出来が悪かったので何とかきれいにできるようにと、それから練習したのにも関わらずなぜかうまいかない。
ないものねだり、と言われたらそうかもしれない。
だから少年の髪を結う際もうまくできないかもしれないとあらかじめにも言ったのに少年はそれでもいい、と一点張りで。仕方なくけれど綺麗に結おうと頑張るが上手くいかず。
出来上がったその状態を見た少年は笑いありがとう!と言い自慢してくると食堂に走っていったので慌てて青年は少年の後を追った。
それは当時の義妹と同じ笑顔で同じ行動をしていたことに焦っていた青年は気づくことはなかった。
少しでも好きな人の好みを知りたいと思うのは誰でもある。
少年は大好きな青年がいつも飲んでいるコーヒー飲むことで近づきたいとつい買ってしまった。
初心者にはいきなりハードルの高いブラックで。
存在感の放つコーヒーにしり込みしていると、青年が少年に気づき声をかけた。慌てる少年とコーヒーを見て青年は何となく理解をし、飲み物を取りに行った。
少年はじっとコーヒーを見て覚悟を決めコーヒーを飲んだ。
が、初心者にはやはりハードルの高い苦さで。悶絶していると、青年が飲み物を持って戻ってきた。
少年の名を呼び青年は向かいに座りじっと様子を見た。
悶絶から少し回復した少年はコーヒーおいしいなと、少し泣きそうになりながら言った。
青年は持ってきた飲み物を少年に間違えてしまったから取り替えないか?と言われた。
少年が青年の飲み物を見るとココアであった。
好きじゃないのにと少年は不思議に思ったが飲み切れる自信がなかったのでありがたく交換した。
美味しそうに飲む少年をほほえましく見ながら青年はコーヒーを飲んだ。