ひのえ

Open App
4/13/2024, 1:27:55 PM

街の喧騒を抜け出して
静かな住宅地を歩く
緩やかな勾配の坂を登り
春にしては暖かすぎる陽気に
じわりと汗が滲む

途中の公園の藤棚の下で
木陰に吹く風の爽やかさを感じながら
慣れない靴で傷ついた踵を気にしてる

約束の時間まではまだもう少し

貴方の家に着いたなら
貴方にあったならば
まずはなんて話そうか

そう考える私の頭上を
熊蜂が飛び交っていく

今日は快晴
桜がまだ少し残る
卯月のころ






お題:快晴

4/12/2024, 12:06:50 PM

拝啓、高く遥けき空へ

あの日 私が羨んだ雲は何処へ行きましたか。
あの日 星にした願いは結局叶いませんでした。
あの日 青空を見て誓ったことは もう諦めました。
あの日 自殺未遂した日の春の空が忘れられません。

拝啓、今日の空へ

あの雲がどうか海になりますように。
叶わない願いが報われますように。
諦めが私の人生の全てになりますように。
どうか明日もあの日のように暖かく晴れますように。







お題:遠くの空へ

4/11/2024, 10:44:29 AM

私の好きな昔の歌に、こんな歌詞があった
「言葉の弱さに燃え尽き、そして君は歌うだろう」

私はいつも伝えたいことが言葉にできない
伝えたいと思うことはみんな形而上になってしまう
詩人たちはきっとみんなそうなんだろう

だから私は言葉を探す
時に言葉を大袈裟に飾り
時に言葉を大幅に削いで
そうして伝わるものが 私の胸の内と同じでなくても
誰かの心にに少しだけ残ればいいと思うんだ





お題:言葉にできない

4/10/2024, 11:01:34 AM

人の気も知らないで
温む空気 白い陽光 散る桜





お題:春爛漫

4/9/2024, 1:30:32 PM

あの春の私は
世界中のどこの誰よりも死を望んでいた
自死を選べば 世界中の何もかもが
きっと良くなるような気がしていた

私は美しい絵画に一雫飛んでしまった
黒いインキのようなものだった
慌てて拭おうとすればするほど
滲んで広がって、取れなくなってゆくような
あの春の私は そういうものだった

私はありったけの薬と一瓶のアルコールを用意して
そしてそれらを 嘔吐きながら飲み下した
何回にも分けて 自らを死へと押しやろうとした

結局のところ それは叶わなかった
目覚めた後には 幾つかの地獄が
口を開けて待っていただけだった

春になるたびに今でも
あの春の私が 六道の辻から私を呼ぶ声がする
私の中の何かを確かに あの時に亡くしたのだ
それが今でも 私の背中を這い上がって
肩に 首に 心の臓に絡みついて
あっちだよ、と死の方を指差す






お題:誰よりも、ずっと

Next