「静寂に包まれた部屋」 #11
僕の部屋はいつも静寂に包まれている。
物心がついてから少しすると、両親はリビングに大金を置きどこかへ消えていった。
その時の両親の後ろ姿を忘れることはないだろう。
毎日毎日、変わり映えのない生活を送る。
そんな僕の日々に君は入ってきた。
退屈だった学校は毎日の一つ一つが楽しくなった。
それだけでなく、私生活にも影響を与えてくれた。
たまたま僕の誕生日を知り、プレゼントとしてくれた置き時計。
静寂に包まれていた部屋は活気のある部屋へと変わった。
君はいつも僕のことを照らしてくれた。
もう君とは会うことはないが君との思い出があり続ける限り、僕の部屋は窮屈ではなくなった。
「別れ際に」 #10
僕は自分の余命が僅かだと知った。その後、病院に入院してからどれほどの月日が経ったのだろう。
最後に人が訪ねてきたのはいつだっただろうか。
僕の病室では、もはや僕の心臓の音しか聞こえない。
窓の外にある木を眺める。病室が3階にあるため、外の景色は空と一本の木しかない。
年中そこに佇む木をみていた。あの木に再び葉がつく頃、僕はまだここにいるのだろうか。
「こんにちは。お兄さん」
そんな声が聞こえ、ドアの方に視線を向けるとそこには小学生くらいの男の子がいた。
「……こんにちは。…迷子かな…?」
人と話すのが久しぶりで少し声が震える。
その男の子は僕の質問に答えることはせず
「お兄さん、僕と遊んでくれない?」と言った。
「……いいよ。」
誰かともっと一緒にいたい。そう思った。
それから僕は男の子とたくさん遊んだ。
日が暮れた頃、僕は眠気がきてベッドで目を閉じた。
「お兄さん、今日は楽しかった?」
「…楽しかった…」
「……よかった」
その言葉を聞くと共に、僕の意識はゆっくりと消えていった。
僕の意識が消え、病室が静まりかえった頃
「さようなら、お兄さん」
別れ際に男の子はそう言い、静かに笑った。
そして1人、男の子は窓の外へと飛んで消えていった。
この病室からは鼓動の音も消え、静寂に包まれた。
「上手くいかなくたっていい」 #9
私はいつも勝負事が苦手だ。
大事な場面でいつも負けてしまう。
でも、もう大丈夫だ。
私の影にはいつも君がいるから…。
「蝶よ花よ」 #8
君は誰なんだ…。
君は蝶よ花よと育てられたであろう。
蝶や花よりも儚く美しさを持っている君。
ミステリアスな雰囲気ももつ君。
僕はもっと君のことを知りたいだけだ…。
「最初から決まってた」 #7
僕の君との関係は、最初から決まってたのかもしれない。
僕たち人間はこの世界の理に逆らうことはできない。
まるでロミオとジュリエットのように。
運命は残酷にも僕たちを引き裂いた。
もし君とまたいられたら。そう思わない日はない。
でも、その願いが叶う日は永遠に来ない……。