小絲さなこ

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8/18/2025, 6:36:28 AM


「買い置きのアイス」


お盆が終わっても、体温並みの気温の日々。

「台風も発生しないなんて、本当におかしいよね、今年は」

そう言うと、姉はパタパタと団扇で仰ぎながらキッチンへ向かった。

「げっ!アイスもう無いじゃん!」
「そういや親父が昨日風呂上がりにチョコモナカジャンボ食ってた」
「ほんとに?あんたじゃなくて?」

姉のアイスを食べるなんて、そんな恐ろしいこと俺ができるわけないだろう。

「うーん……お父さんならまぁ……許す」
「ファザコンかよ」
「あー、はいはい、そうですよ、ファザコンですよ。仕方ない、買ってくるか」
「あ、じゃあ俺の分も」
「なんって図々しい!働かざる者食うべからず!」

たしかに、親父はお盆休みなく働いているし、俺はバイトもせずグータラ……いや、高校二年の夏休みを満喫してるけど。

「家事はしてるよ!」

掃除の下手な姉の代わりに!

「はいはいはいはい。代金は後払いね」

姉は俺にだけ厳しい。


────終わらない夏
2025.08.17.

8/17/2025, 8:39:45 AM


「今だから言えること」

あの街から飛び出してからの日々は、忙しくも充実していて、つい忘れそうになる。

きっとあの人は、今も追い続けているんだろう。

もう私には関係ない。
あの街で過ごしていたことも。
あの人が見ていたものも。

それでも、あの人の願いがいつか叶えば良いと思う。
あんなことがあったけど、今の私がいるのは、間違いなくあの人の出会いがあったから。




────遠くの空へ
2025.08.16.

8/16/2025, 9:46:47 AM


「運命の出会いなんて信じてなかった」


興味がないわけではなかった。
でも、興味がないふりをしていたんだ。

三次元なんて興味がない。今は推し活で充分──などと言って。

友人が恋人に裏切られる話を聞くたびに、恋愛って面倒だなぁと思っていたのもある。
それになにより、自分に自信がなかったのだ。

だけど、面倒そうだと思っていても、自信がなくても、それはいきなりやってきた。

『雷に撃たれたような出会いだった』
フィクションでは見かける表現。
そんなことあるわけないって、思ってた。

あなたに出逢うまでは────



────!マークじゃ足りない感情
2025.08.15.

8/15/2025, 8:08:42 AM

「あなたは反射するもの」

グラデーションの墨色に、ひとつだけ淡い色。
私の描いた絵を見て、彼が呟く。

「あの風景、君にはこんな風に見えているんだな」

あのとき、私は気づいたのだ。
なぜ、彼と一緒にいる時に風景が違って見えるのか──ということに。

「非常に興味深い」

自身の顎を撫でながら、彼は頷く。

「君の見る世界がどういうものか、僕に見せてくれないか」

息を呑み、彼の顔を見つめる。

「その……これからもずっと」

頬を染めながら付け足した一言に、胸が詰まる。

それって、それって……



────君が見た景色
2025.08.14.

8/14/2025, 8:19:22 AM


「だから僕は今日も本を開く」

たぶん、自分はいわゆる『普通』ではない。そういう自覚はある。
多くの人が『言葉にしなくてもわかること』がわからないのだ。

胸の奥の疼くような感覚や、身体を流れる血がフツフツとするような感覚。
今まで味わったことのないものばかり。

『普通』に少しでも近づきたい。
そうしたら、あの子の考えていることがわかるかもしれない。



────言葉にならないもの
2025.08.13.

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