小絲さなこ

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7/6/2024, 2:34:23 PM

「ふたりだけの写真」



「あーそうかぁ、そうだよなぁ……」
「どうしたの、頭抱えて」
「いや、ほら、披露宴で流す映像で使う画像探してるんだけど」
「うん」
「俺たちの場合、友人関係だった期間があまりにも長いからその……」
「その?」
「恋人らしい写真が、ない……」
「みんなと撮った写真ならあるでしょ」
「あるけど、あるけどさぁ!」
「どうせみんな私たちのことわかってるから、いいんじゃない?」
「え……いいの……?」

そもそも、友人関係だった期間が二十年超えてしまった理由の大半は、そちらにあるのだ。今さら何を言っているのだろう。「やっとくっついたか」と共通の友人全員に言われたことを思い出してほしい。

「いいなら、いいけど……」とか「なんかなぁ」と呟いている彼を見つめる。

ぶつぶつ言っている暇があったら、使う画像選んでほしい。というか、言いたいことがあるならハッキリ言ってほしいのだが……


「じゃあ、今度の休みにどこか出掛けて撮る?」

私の提案に、ぱぁっと嬉しそうな顔をする彼。
愛いやつめ。


あー、私も大概だなぁ……



────友だちの思い出

7/5/2024, 2:55:19 PM

「記憶の空」


子供の頃、自分が住む東京の空と、祖父母が住む田舎の空は違う空だと思っていた。
昼間は青い色の濃さが違うし、夜は星の数が違うから。

もしも都会の灯りが全て消えたら、どれくらいの星を見ることができるのだろう。



手を伸ばす。
片手で足りてしまう空の光の数。
祖父母の家からは、天の川も見えたのに。


今はもう無い祖父母の家の庭から見た空。
記憶はどんどん薄れていくのに、あの星空だけは覚えている。


それを忘れたくなくて、もっと多くの星を見たくて、私は辺鄙な場所を選んで旅に出る。



────星空

7/4/2024, 2:30:58 PM


「あまやどり」



本来なら、出会うはずがなかった。

生まれた地域も、住む地域も、趣味も、なにもかも違うふたり。

なぜ、あのときこの街に来たのか。
面倒だからと旅行なんてしないのに。
しかも有名な場所でもなんでもない場所。

なぜ、あのときあの店に入ろうと思ったのか。
雨宿りできる場所なんて、他にもあったというのに。


雨ではないもので頬を濡らしていた君に声をかけてしまったのは、偶然なのかそれとも……





────神様だけが知っている

7/3/2024, 2:47:57 PM


「茨の道」



「君が進みたいのは、茨の道だぞ」
あの人はそう言いつつも、その道を歩きやすいように整備してくれていた。
そのことに気がついたのは、だいぶあとになってからだったが。

「ここから先は、君の好きにすればいい」
そう言って背を向けたあの人を追いかけて、ずっと追いかけて、今も追いかけている。

あの人が天へ還っても、ずっと。


だから、あの人と同じように君の進む道を、茨の道から人がギリギリ歩けるくらいの道に整備している。まだ若い君には気付かれないように。



────この道の先に

7/2/2024, 2:01:21 PM


「アルミシート」



雨戸がないこの部屋は、遮光カーテンをかけていてもカーテンレールの上から朝陽が差し込んでくる。

引っ越してきた当時は冬だったので気ならなかったが、日の出時刻が早まるにつれ、あまりの眩しさにアラームの設定時刻よりも早く目を覚ますようになってきたのだ。


「とはいえ、あまりお金はかけられないし……」


とりあえず、百均でアルミシートを購入し、カットしてカーテンレールの上にセットしてみる。

なかなか良いが、見た目があまり良くないのが難点。

「ま、彼氏もいないし。誰か泊まりに来るわけでもないし。いっか」


翌月、彼氏が出来ることを、この時の私はまだ知らない。




────日差し

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