小絲さなこ

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4/9/2024, 2:58:46 PM



「一番近くて、一番遠い」



家が隣で年も一歳違い。
まるで兄妹みたいだと、お互いの家族も言っていた。

おままごと、かいじゅうごっこ、かくれんぼ、ひみつきち、たんけんごっこ、ゲーム……

制服を着るようになるまで、いっしょに遊ぶのが当たり前だった。


部活、試験、生徒会、文化祭の準備……
ランドセルを背負っているあたしには、わからなかったことが増えていって、顔を合わせることも少なくなってしまった。

同じ制服を着て、同じ学校に一年遅れて通って、初めて気がついたんだ。
兄妹なんかじゃ嫌だということに。

だけど、あなたにとってのあたしは今でも「家族じゃないけど家族同然」の妹分。


隣に住んでいなければ、良かったのかな。
中学で初めて出会う、ただの先輩後輩だったら違ったのかな。

だけど、ずっと一緒に遊んでいた思い出は、なくしたくない。



たぶんきっと、一番近くて、一番遠い。




────誰よりも、ずっと

4/8/2024, 2:07:55 PM


「重ねて」



物心つく前から一緒にいるふたり。
言葉にしなくてもわかりあえた。

年を重ねていくにつれ、言葉にしなくてはならないことが少しずつ見つかっていく。

隠し事も嘘も少しずつ増えていって、言えないことを言いたくても言えなくなっていった。


もつれた糸を解くために遠回り。
今までも、これからも、同じ気持ちでお互いを見ている。


今は、昔みたいに言葉にしなくてもわかることがあるんだ。

積み重ねた年月。
崩れることなくこのままずっと、ふたりは年を重ねていく。



────これからも、ずっと

4/7/2024, 1:52:16 PM

「逃げる影」



夕方、長くなっていく影が怖かった。
そのまま伸びて自分から離れていってしまう気がして。


夜は別の世界への入り口が開く時間帯。
逃げた影は、こことは別の世界へと逃げてしまう。
そして影は私とそっくりな人間の姿になり、その別の世界で私になりすまして暮らすのだ。


そんなことを想像し、どうにかして影が伸びないようにしたけど、出来なかった。


下ばかり見ていた私には、夕焼けの記憶がない。


今は、影をどうにかしようとも思わないし、別の世界に行くのも構わないけど、なりすましは勘弁してほしいと思う。

そして、多少無理してでも夕焼けは見ている。

一度として同じ風景は無いのだということを、知ってしまったから。



────沈む夕日

4/6/2024, 2:06:36 PM


「ブラックホール」




まるでブラックホールだ。
吸い寄せられてしまったが最後、どうなるかわからない。

だから、視線を逸らしたい。
だけど、君の瞳から逃れられない。

君の瞳にうつる俺は、狼狽えていたり、驚いていたり、泣きそうになっていたり、碌なもんじゃない。

これ以上、君のことを知りたくない。
だけど、君のことをもっと知りたい。



君の瞳の奥の、もっと奥を覗き込む。


唇に君の唇が押し当てられて、シャットダウン。


そして、そのまま堕ちていく。




────君の目を見つめると

4/5/2024, 2:27:29 PM



「プロポーズ」



ギャップが激し過ぎると笑われるかもしれない。
意外だと笑われてしまうのは覚悟の上。

星空の下で永遠を誓いたいんだ。


満天の星空っていうのは、意外と難しい。
民家も宿泊施設もない場所を求め、車を走らせる。
ぐねぐねと山道を登っていく。
慣れてるように思われてたら、ちょっと嬉しい。
実は昼間に何回かひとりで来てる。


国道最高地点。
標高二千百七十二メートル。

天の川を見上げる君を見つめる。
言おうと思っていた決め台詞が消えていく。

シンプルな言葉になってしまったけど、何も言わず笑顔で頷いた君を抱きしめる。



────星空の下で

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