「逃げる影」
夕方、長くなっていく影が怖かった。
そのまま伸びて自分から離れていってしまう気がして。
夜は別の世界への入り口が開く時間帯。
逃げた影は、こことは別の世界へと逃げてしまう。
そして影は私とそっくりな人間の姿になり、その別の世界で私になりすまして暮らすのだ。
そんなことを想像し、どうにかして影が伸びないようにしたけど、出来なかった。
下ばかり見ていた私には、夕焼けの記憶がない。
今は、影をどうにかしようとも思わないし、別の世界に行くのも構わないけど、なりすましは勘弁してほしいと思う。
そして、多少無理してでも夕焼けは見ている。
一度として同じ風景は無いのだということを、知ってしまったから。
────沈む夕日
4/7/2024, 1:52:16 PM