小絲さなこ

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4/4/2024, 2:18:29 PM



「敗因」



俺だったら、君をそんな風に泣かせたりしない。
だけど、君を心からの笑顔にも出来ない。

友達付き合いが長過ぎたんだ。
ずっと隣にいられると信じて疑わなかった。

もしもあの時……と今なら思うことが、なかったわけではない。

ただ、この関係が壊れることが怖かった。
それに打ち勝つ勇気が持てなかった俺の負けだ。


君が幸せなら、それでいいんだ。
何度も、何度でも言い聞かせる。

君が幸せなら……


────それでいい

4/3/2024, 2:06:59 PM



「あの頃の願い」


あの頃、ひそかに願っていたことは、ひとつだけだった。
絶対に、叶うことがないって、わかっていたから、神頼みもしていない。


人生何があるかわからない。
一年後はどこにいるか、何をしているか、わからないような、そんな年頃になった私たち。

住んでいるところも、立場も変わってしまえば、考え方だって変わってしまう。
もう二度と会うことすら出来ない子もいる。


あの頃に願っていたことは、恋愛成就でも仕事のことでもなくて、ただ、ずっとみんなとこうしていたい、ということだった。


絶対に叶うことのない願い。
だけど、あの頃、なによりも大切だった。


──── 一つだけ

4/2/2024, 2:22:34 PM


「失わないために」


大切なものは、肌身離さず持ち歩く?
それとも、誰にも触れられないように家の奥に仕舞っておく?

持ち歩いていたら、落としてしまうかもしれない 。
家に置いても留守にしている間に盗まれたり火事などに遭うかも。

どちらも避けたい。

出た結論は、大切なものは作らない、だった。



大切なものが無ければ、失う心配も不安もない。



そう、思っていたのに。


君を常に連れて歩くのと、閉じ込めてしまうの、どちらが良いんだろう。



────大切なもの

4/1/2024, 2:01:36 PM

「実現する嘘」




人を傷つけない嘘って、難しいよな。
ソファでSNSを流し見しているが、なかには洒落にならないものもあって、眉間に皺が寄るのが自分でもわかる。


「もしも、今日ついた嘘が実現するとしたら、どんな嘘をつく?」

俺の隣で通信端末を弄びながら君は言った。


「SNSの企業アカウントの、エイプリル・フールの嘘新製品情報って、そのお題に添ったものじゃないかって思うんだけど」

なるほど。あったら面白いけど、作るには技術的にもコスト的にも現実的じゃない、という点では当てはまりそうだ。

「ねぇ、あなたはどんな嘘をつく?」

「ついたら実現してしまう嘘?」

「そう」

「人を傷つけない嘘と同じくらい難易度高いな」




────エイプリルフール

3/31/2024, 10:47:01 AM



「回って返ってくる」



幸せの条件を並べてみる。

そのひとつひとつは、とても些細なこと。
だけど、意外と難しいこと。

そして、そのひとつひとつ、どれかが欠けているだけで、幸せというものから遠いのではないかと思ってしまう。


人それぞれ違う条件。
改めて問われると、即答出来そうで出来ない。


僕の幸せは君が笑顔でいること。
それを君に言ったら、君の幸せは僕が幸せでいることだという。

幸せは、ぐるぐる回って自分に返ってくるものっていうけど、本当にそうかも。


────幸せに




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「何年経っても」



誰よりも幸せになって欲しかったあの子は、誰よりも早く、神様のもとに帰ってしまった。

将来を想像する余裕もなくて、その日一日生き抜くにも必死だった私たち。

時代のせいが八割なのに、自己責任と言われることに反論さえ許されなかった、あの頃。

本当の理由は何だったのかと、問い詰めた友人をぼんやりと見ていた。
そんなこと知ってどうする。

誰よりも幸せになって欲しかったあの子が、生まれ変わっていたら、誰よりも幸せになって欲しいだけ。



あの子のことは忘れなさいと説いたお坊さんに逆らって、今日も明日も私は生きていく。



────幸せに

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