「回って返ってくる」
幸せの条件を並べてみる。
そのひとつひとつは、とても些細なこと。
だけど、意外と難しいこと。
そして、そのひとつひとつ、どれかが欠けているだけで、幸せというものから遠いのではないかと思ってしまう。
人それぞれ違う条件。
改めて問われると、即答出来そうで出来ない。
僕の幸せは君が笑顔でいること。
それを君に言ったら、君の幸せは僕が幸せでいることだという。
幸せは、ぐるぐる回って自分に返ってくるものっていうけど、本当にそうかも。
────幸せに
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「何年経っても」
誰よりも幸せになって欲しかったあの子は、誰よりも早く、神様のもとに帰ってしまった。
将来を想像する余裕もなくて、その日一日生き抜くにも必死だった私たち。
時代のせいが八割なのに、自己責任と言われることに反論さえ許されなかった、あの頃。
本当の理由は何だったのかと、問い詰めた友人をぼんやりと見ていた。
そんなこと知ってどうする。
誰よりも幸せになって欲しかったあの子が、生まれ変わっていたら、誰よりも幸せになって欲しいだけ。
あの子のことは忘れなさいと説いたお坊さんに逆らって、今日も明日も私は生きていく。
────幸せに
「バレバレ」
さりげなく、だが確実にあの子の隣をキープしているあいつ。
あの子もさりげなくあいつの近くにいるようにしている。
本人たちは誰にも気付かれないようにしているようだが、周囲にはバレバレだ。
そのくせ 本人たちはお互いの気持ちにまったく気が付いていない。
あの二人に余計なことをするヤツが現れないように目を光らせている我々のことも、気が付いていないんだろう。だが、これは気付かないでいい。
いい加減早くお互いの気持ちに気付いてくれないかな。
────何気ないふり
「せめて物語の世界だけでも」
「……てわけでさぁ、最近は最終回のネタバレチェックして内容と結末確認してから読んでるんだよね〜」
「ふぅん。今話題の『ネタバレ消費』みたいな感じ?」
「あー、せっかく見るなら最後まで安心して見たいから、とか、そういうタイパ的なやつでしょ?」
「そうそれ」
「ちょっと違うんだよね〜」
そう言って彼女は、いちご牛乳のパックのストローをくわえた。
考えながら、ちゅうちゅう飲む。
「だって、現実って結構キツイじゃん。せめて物語の中だけでも、平和なもの見たいっていうか。辛い幼少期とか、虐げられる展開、読むのキツくなってきてさ。妬みや争いは現実だけで充分だよ」
窓の外を見ながら言う彼女。
その視線の先にいる人は、彼女の想い人だ。
「なるほどねぇ」
「昔は、鬱展開とか、ざまぁとか好んで読んでたけど、最近はダメでさー、悪役も改心して最後はそれなりに幸せを掴むとか、そういう話に惹かれる今日この頃なわけよ」
「へぇ……」
「年かなぁ……」
彼女はそう言って、制服のリボンを直している。
「まぁ、来年成人だからね」
────ハッピーエンド
「その瞳は僕を暴く」
あの子と目が合うと、つい視線を逸らしてしまう。
僕のなかにある最大かつ最悪な秘密を見透かされる気がして、落ち着かない。
誰にも言えない。
好きになってはいけない人を想っていること。
彼女と彼の仲が壊れることを祈っていること。
あの子と彼女は親友。
だから、あの子はきっと彼女と彼の幸せを祈っている。
友達の彼女のことを好きになった男なんて、確実に警戒対象だ。
彼女とどうにかなろうなんて、思っていない。
でも、友達とその彼女の仲が壊れることを密かに祈る自分は最低だと思う。
もしかしたら、あの子は気づいているのではないか。
ほら、またあの子と目が合った。
吸い込まれそうな瞳に、僕の心はざわつく。
────見つめられると
「かわいいひと」
貴方は私のことを可愛い可愛いと言うけれど、私から見たら貴方の方が可愛い。
目が合っただけで嬉しそうに笑う。
手を繋いだらまるで子供みたいに、はしゃぐの。
それを、無意識にしているものだから、タチが悪いよ。
貴方は私のことを好き好き愛してるって言う。
それこそ所構わず言うから、ちょっと勘弁してほしい。
でも羨ましくもある。
私はそこまでオープンに好きだの愛してるだの言えないから。
素直過ぎて、可愛すぎるのよ、貴方は。
────My Heart