「せめて物語の世界だけでも」
「……てわけでさぁ、最近は最終回のネタバレチェックして内容と結末確認してから読んでるんだよね〜」
「ふぅん。今話題の『ネタバレ消費』みたいな感じ?」
「あー、せっかく見るなら最後まで安心して見たいから、とか、そういうタイパ的なやつでしょ?」
「そうそれ」
「ちょっと違うんだよね〜」
そう言って彼女は、いちご牛乳のパックのストローをくわえた。
考えながら、ちゅうちゅう飲む。
「だって、現実って結構キツイじゃん。せめて物語の中だけでも、平和なもの見たいっていうか。辛い幼少期とか、虐げられる展開、読むのキツくなってきてさ。妬みや争いは現実だけで充分だよ」
窓の外を見ながら言う彼女。
その視線の先にいる人は、彼女の想い人だ。
「なるほどねぇ」
「昔は、鬱展開とか、ざまぁとか好んで読んでたけど、最近はダメでさー、悪役も改心して最後はそれなりに幸せを掴むとか、そういう話に惹かれる今日この頃なわけよ」
「へぇ……」
「年かなぁ……」
彼女はそう言って、制服のリボンを直している。
「まぁ、来年成人だからね」
────ハッピーエンド
3/29/2024, 2:15:29 PM