ひともどき

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10/24/2023, 11:25:20 AM

ひとの決意を翻させることは難しい。
正確には、烏滸がましい。

ひとは、決めきれていないから悩むし、相談する。
思案しているうちはいくらでも取り返しがつく。

ただ、ひと度決めてしまったものは、鋼の意志で取り組むべきであるし、それほどの意志を持たない状態は、まだ悩んでいるとも言える。

そこまでの決意を覆すには、意志を砕かねばならない。
そこまでの意志は、悩んだ時間と、そのひとの生来の熱意から成る。
つまり、そのひとのかけた時間と、そのひととなりを、
一度否定しなければならない。

否定は辛い。いつの日がその刃は自らに向く。
そんな言葉で、相手を傷付けねばならない。
だから、烏滸がましいと思うのだ。



そんなわけで、言うのは辛いし、いつの日か私の身にも
降りかかることは解っているが。
お願いだから、
君の命をそんなに容易く棄てないでくれないか。



お題「行かないで」

10/23/2023, 10:41:15 AM

空は宇宙から見た地球の色と同じなのだろうか。
それとも、水の色を反射しているから青いのだろうか。
理科が得意だったら、答えも理知的に導き出せただろう。


雲一つない空を自由の証と捉えるか、
重力に捕われた私達の果てしない監獄と捉えるか、
きっとどちらも正しくて、解はない。


植物と陽光をいっぱいに浴びるのが好きなひとも居れば、
夏には入道雲を、冬には気分すらも押し潰すほどの
分厚い雲を足したほうが風情だと云うひとも居るだろう。


私なら幾許か太陽を傾けて、真紅の薄明や紫煙燻る暁を
愛でる。勿論雲を浮かべても雪を散らせても素敵だ。

永遠は約束できないのだから、
ありあわせの美を尊ぶ方が心には都合が良い。



お題「どこまでも続く青い空」

10/22/2023, 11:30:28 PM

ひと一倍暑がりなので
衣替えという概念を正直わかっていない。

中学に上がる際に初めて長ズボンを履いたし、
あろうことか年中着るらしい。
ずっと汗でズボンを濡らしていた。

社会に出てから、10月からはどんなに暑かろうが
上着を着るのだと言われた。
ネクタイで皆酸欠なのだと言い聞かせて気を紛らわせた。


今何月か、という判断基準だけで服を選ぶなら
地球温暖化のことくらいもう少し真面目に考えたら?

お題「衣替え」

10/21/2023, 10:59:02 PM

別れが多い生涯だったので、慣れていると思う。

子供の時分から引っ越しも何度もしたし、よく泣いた。
そのうち泣かずに淡々と別れられるようになった。


思春期に入ると一周回って、今生の別れをなんとなく察知できるようになった。
会いたくても、会えないひとの方が増えた。


独り立ちして社会に出てから、名前すら知らないひととばかり関わるようになった。
同じ町に住んでいるだろうけど、一言も交わすことはない通りすがりのひと。
電車のアナウンスをするいつもの駅員さん。
よく行く飯屋の大将。
行きつけのバーにいつもいる常連さん。

名前を知らないと、別れも早い。
別れには、慣れたつもりだった。


先日、身内が死んだ。
老衰の大往生だ。あまり話が通じなかったし、
そろそろだろうと覚悟はできていた、

つもりだった。


お題「声が枯れるまで」

10/21/2023, 2:06:06 AM

友人が云った。
アイネクライネって曲が好きなんだ。
モーツァルトじゃなくて、米津玄師の方ね。

「今痛いくらい幸せな思い出が
いつか来るお別れを育てて歩く」
ひとは、ひとと別れざるを得ないのだから、
別れを主眼に置いて関係を育むらしい。

私も、彼に従うことにした。



はじめまして。
あなたと楽しい思い出を刻めればいいな。
別れる時はひと思いに
思い出をビリビリに引き裂くのかな。
それとも、感傷たっぷりで
思い出を一枚ずつめくってみせるのかな。

ともあれ、乾杯しよう。
新しい出会いと、ずっと先の別れに。


お題「始まりはいつも」

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