別れが多い生涯だったので、慣れていると思う。
子供の時分から引っ越しも何度もしたし、よく泣いた。
そのうち泣かずに淡々と別れられるようになった。
思春期に入ると一周回って、今生の別れをなんとなく察知できるようになった。
会いたくても、会えないひとの方が増えた。
独り立ちして社会に出てから、名前すら知らないひととばかり関わるようになった。
同じ町に住んでいるだろうけど、一言も交わすことはない通りすがりのひと。
電車のアナウンスをするいつもの駅員さん。
よく行く飯屋の大将。
行きつけのバーにいつもいる常連さん。
名前を知らないと、別れも早い。
別れには、慣れたつもりだった。
先日、身内が死んだ。
老衰の大往生だ。あまり話が通じなかったし、
そろそろだろうと覚悟はできていた、
つもりだった。
お題「声が枯れるまで」
10/21/2023, 10:59:02 PM