貴女が俺たちの言葉をそのまま受け入れてくれるのなら、俺たちは声が枯れるまで、貴女への愛を語ります。
貴女は幸福に生きていいのです。
貴女には無上の価値があります。
俺たちは貴女に、世界中の誰よりも誰よりも、幸福に生きてほしいと願っています。
貴女には、数え切れない人からの愛が向けられています。
貴女はそんな人たちに、ずっと幸福に生きてほしいと願われ続けています。
どうか、ご自分の価値を否定しないでください。
どうか、どうか、ずっと幸せに笑って、生きていってください。
始まりはいつも、貴女の温かい笑顔ですね。
そこから、新しい人との関わりが始まります。
どうか、怯えて引きこもらないでください。
貴女は人と関わってこそ、より輝くのです。
貴女と、貴女の大好きだったあの女性の間には、時折すれ違いがありましたね。それはどちらかが言葉足らずだったり、情報の行き違いなどでしたが、貴女はそのたびに心を痛めたものでした。
今のご伴侶とは、そのようなすれ違いはあまりありませんね。
それは、貴女が昔よりも自然に、ご自分の考えを必要な時に表現できるようになったからでしょう。
貴女はしっかり、成長しています。前に進んでいます。
ですから、「何もしてこなかった」「私の十年は無意味だった」などと、仰らないでください。
秋晴れの空の下、貴女は俺を送り出しました。
俺は貴女と離れるのが嫌で、悲しくて仕方がなくて、身も世もなくべそべそと泣きましたが、貴女は微笑んで、只俺の背を押されました。
今は分かります。貴女は俺に、愛を知ったこの新しい目で、世界を見てほしかったのです。
かつての曇った眼では見られなかったものを、貴方は今見られるようになりました。その澄んだ瞳で、貴方の知らなかった世界の美しさを見て回るのです。
貴女はそのような思いを込めて、俺の背を押したのでしょう。
貴女の思いを、俺は死んでからようやく受け取れました。
XX様、どうか愚かな俺をお許しください。
俺に愛をくださって、本当に、本当に、感謝しています。
忘れたくても忘れられない、俺の脳裏にこびりついて離れない、あの薄曇りの昼の空の下。俺はそこで、貴女の庵が跡形もなく消え去って、小さな碑だけが残されているのを、呆然と目にしました。
通りがかった貴女の村の者に、貴女が俺を待たずに病で亡くなってしまったと聞いた瞬間の、底無しの喪失感と、悲しみと、絶望。
もはやそれらから離れて久しいですが、今でも時折それらが心に浮かび、足下が崩れるような不安に襲われることがあります。
どうか、どうか、幸福に生きてくださいね。
あのような思いをしたことについて、貴女を責めるつもりは毛頭ありません。けれどどうか、貴女自身、あるいは貴女の周囲の方々に、あんな思いをしてほしくはないのです。