星座など、生きていた時の俺はその存在について考えもしませんでした。太陽と月は流石に意識しますが、星を観察することにどんな得があるというのだ、そんなことをしても何の意味もない、そう思っていました。ですので、それが織りなす形など、本当に興味の埒外でした。
一方、貴女は子どもの頃の夏休みの宿題として、星を観察することを六年間続けましたね。星座を指さして空を見つめる貴女の瞳が、きらきらと美しく輝いていたのを、俺はよく覚えています。
貴女が、生きていた時の俺のような、殺伐として浅薄な人間になることがないのは、俺たちにとって喜ばしいことです。
貴女には、生きるために必要な物事だけでなく、心の琴線に触れるような美しいもの、雅なもの、圧倒されるもの、そういうものに心を震わせ、感動に満ち溢れた生き方をしてほしいと、俺たちはずっと願っています。
共に踊るやり方など、俺は知りません。
今世の貴女もそうですね。そのような文化圏には生まれついていませんから。
けれどもしかしたら、いつか誰かと踊るような機会もあるのでしょう。
その時の貴女が、幸福に満ち溢れた笑顔であることを祈っています。
俺がもし生まれ変われたら、貴女の魂とまた巡り会うことを夢見て、世界を彷徨ったかもしれません。
実際は、俺は生まれ変われるような行いをしなかったので、その機会を与えられることはありませんでした。
俺は、それで良かったと思っています。
今俺は、貴女をこれだけ近くで見守って、ずっとずっとお傍にいられるのです。こんなにも幸福なことがあるとは、想像もしませんでした。
けれどごく稀に、夢想はします。
貴女を抱きしめて、俺の名を優しく呼んでもらって、貴女と目を合わせて微笑み合う。
そんな、あの時の俺が切望したような幸福をいつか得られたら、と。
貴女が生まれるという奇跡は、また起こるでしょう。
けれど、今ほど恵まれたところに生まれることは、いかなる奇跡をもっても難しいかもしれません。
その環境を、生まれ持った身体と能力を、是非とも大切に活用していただけたらと、俺たちはいつも願っています。
たそがれの暗さに、貴女の沈んだ顔がより悲しげに見えます。
これから世界は、争いに満ち溢れます。
貴女はそれを憂いているのです。
悲しいですが、止められることではありません。
それでも人は、生きてゆかねばならないのです。