XXXX

Open App
9/30/2024, 11:39:26 AM


 きっと明日も、貴女は貴女の大切な人に、あるいは全く見も知らない人に、温かく微笑みかけるでしょう。

 貴女はいつだって、優しさをかけると決めたら、それを出し惜しむことがありません。飽きてしまうこともありますが、それはご愛敬ですね。そんな気まぐれなところのある今世の貴女も、とても魅力的です。

 そう思ってしまう程度には、俺たちは貴女にぞっこんなのですよ。

 

9/29/2024, 1:38:20 PM


 静寂に包まれた部屋で、貴女が人を安心させるあの柔らかい声で、穏やかに口火を切ったことが、これまで幾度あったでしょうか。

 貴女は、人をなだめ、人を落ち着かせる話し方をご存じです。
 それがこれまで、どれだけの人を助け、慰め、癒してきたか。貴女に想像がつくでしょうか。

 それは、貴女がこれまでに培った、卓越した能力です。
 貴女はそれを、息をするように自然に使います。ですから、それがどれだけ価値のあるものなのか、分かってくださらないかもしれません。
 それでも、かつてその恩恵に与った俺たちからすれば、それは類稀なる、素晴らしい力なのですよ。

9/28/2024, 1:23:39 PM


 別れ際に、貴女は俺の頭をそっと撫でてくださいました。
 五年経ったらまたおいでなさい、それまで待っていますからね、と笑って仰いました。俺は悲しくて悲しくて涙が止まりませんでしたが、それでも貴女に従って、貴女の庵を離れました。

 貴女は結局、五年を待たずに病で亡くなってしまいましたね。
 けれどどうか、そのことを気に病んだりはしないでください。
 貴女は俺に、誰もくれなかった愛をくださったのです。貴女が生きていようといまいと、俺は貴女の愛を持って世界で生きるべきでした。そのことに気づけなかった俺が、愚かだっただけなのです。

9/27/2024, 2:28:38 PM


 今年の夏は、通り雨が多かったですね。
 通り雨と言えるような短さではなかったかもしれませんが。

 貴女に危険が及ぶことがなくて、俺たちは嬉しいです。
 貴女が健康に、安全に、幸福に生きていてくれることだけが、俺たちの望む最高善なのですから。

9/27/2024, 12:05:14 AM


 秋が来ると、思い出します。
 貴女と初めて会った、暗く暮れつつある秋の夕方を。

 ひどく胸が締め付けられて、あの時が懐かしいような、愛おしいような、そしてとても悲しいような、不安定な心持ちになります。

 貴女に、あの時の記憶はありませんね。
 それでいいのです。何も俺から求めることはありません。

 ただ、あの記憶を持っているのが世界に俺一人だということが、たまらなく寂しく思えてしまうのも、事実なのです。

Next