お題『叶わぬ夢』
いくらがんばっても、好きなことだけでは食べていけないことがある。
たまたま当たれば売れるんだろうけど、そうじゃない場合、すくない稼ぎのなかでやりくりしないといけなくて、それがなかなか辛い。
だから安定している仕事についてそこそこ生活できるくらいの給料を担保するのだ。
そこで夢は叶わなかった、と区切りをつけてもいいが、どうしたって諦めきれず趣味としてほそぼそやるのもいいと思っている。続けることでもしかしたら叶わなかった夢に近づけるような気がするから。
お題『花の香りと共に』
花の香りとともに生活することに憧れている。だが、花の世話はずぼらだからつい忘れてしまう。
おまけに一人で暮らしている部屋は今は服があちこちに散乱していて、掃除機とか面倒でかけていない。こんななかに花を置いておくのは可哀想。でも面倒なものは面倒なのだ。
でも家に花が置いてあると、それだけで気分が良くなる。それに好きな花の匂いだとなおさら部屋がいい空間になりそうで、世話は大変そうだけど憧れている。
お題『心のざわめき』
友人が結婚すると聞いた時、心がざわついた。
たしかに私くらいの年齢になると、結婚する人や子供を持つ人が増えていく。そのなかで私も彼女も現在付き合っている人がいなかったので、二人で今までどおり友人関係を続けていくものばかりだと思っていた。
「おめでとう!」
とざわついている気持ちを表に出さないように精一杯お祝いした。普段頼まないワインまで頼んでそれはもう豪華に。
でも、家に帰って一人になり、私一人だけが取り残されている気持ちになり今度は一人で缶チューハイを開けてやけ酒をすることにした。
お題『君を探して』
喧嘩して彼が出ていった。きっかけはささいなことだ。
それが次第に口論に発展して、「もういい」と言って部屋を出ていった。
最初はあんなやつとか、もう決別かとか思っていたのに時間が経つと彼のことが心配になってくる。
時計は深夜0時を回ろうとしていた。
僕は部屋を出て君を探すことにした。
なんとなく行き先の検討はついている。近くの公園へ行くと、やはり彼がベンチに座って腰を丸めて俯いていた。
僕は二つ分の缶コーヒーを買うと彼に近づいてあつい缶コーヒーを彼の髪に触れさせる。
「うわっ、あっつ!?」
彼が顔を上げ、僕の顔を見ると気まずそうな顔をして俯いた。
「ここにいると思った」
僕のそこ言葉に君は答えない。ふてくされるように視線をそらす。
それを無視して僕は彼の隣に座った。
「……俺を探しに来たの? あんな喧嘩をしたのに」
「どうせ行くところないんでしょ」
僕のその言葉に弱々しく彼は「うん」と返事した。その言い方がなんだかいじらしくなって僕は思わず微笑んだ。
お題『透明』
好きなアーティストのライブのチケット抽選に外れた。
何度も何度もチャレンジしたけど、無理だった。
ライブビューイングという方法もあるけどやはり生で見てみたい。
ライブ会場前でプラカード持ってチケットを求めている人もいるけど、私はせっかく持ってる能力を奥の手として使う。
ライブ会場に着くと、私は瞬時に自分の姿を消した。
私は透明人間になれるのだ。
開場が始まり、しれっと列にまざる。ライブ行ける人はスマホを見せてゲートを通過する。
私もその流れに乗じてゲートを通過しようとして、ブザーが鳴った。
あわてて駆けつける警備員。
「透明人間がいたぞ!」
そう、これは透明人間検知ゲートだ。チケット抽選に外れた輩が紛れ込むのを防ぐために作られたもの。
私は一目散に逃げた。やっぱりライブはちゃんと抽選に当たったり買えたりした者だけが参戦できる特権だ。
でも、でもさぁ、ライブ行きたいじゃない?
私は外に逃げ出した後、諦めきれず外から漏れる音を聞き続けていた。参戦できない悔しさと、音漏れするライブの様子が楽しそうで私は思わず鼻水を垂らしながら涙を流した。