白糸馨月

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お題『透明』

 好きなアーティストのライブのチケット抽選に外れた。
 何度も何度もチャレンジしたけど、無理だった。
 ライブビューイングという方法もあるけどやはり生で見てみたい。
 ライブ会場前でプラカード持ってチケットを求めている人もいるけど、私はせっかく持ってる能力を奥の手として使う。
 ライブ会場に着くと、私は瞬時に自分の姿を消した。
 私は透明人間になれるのだ。
 開場が始まり、しれっと列にまざる。ライブ行ける人はスマホを見せてゲートを通過する。
 私もその流れに乗じてゲートを通過しようとして、ブザーが鳴った。
 あわてて駆けつける警備員。
「透明人間がいたぞ!」
 そう、これは透明人間検知ゲートだ。チケット抽選に外れた輩が紛れ込むのを防ぐために作られたもの。
 私は一目散に逃げた。やっぱりライブはちゃんと抽選に当たったり買えたりした者だけが参戦できる特権だ。
 でも、でもさぁ、ライブ行きたいじゃない?
 私は外に逃げ出した後、諦めきれず外から漏れる音を聞き続けていた。参戦できない悔しさと、音漏れするライブの様子が楽しそうで私は思わず鼻水を垂らしながら涙を流した。

3/14/2025, 3:43:18 AM