白糸馨月

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お題『君を探して』

 喧嘩して彼が出ていった。きっかけはささいなことだ。
 それが次第に口論に発展して、「もういい」と言って部屋を出ていった。
 最初はあんなやつとか、もう決別かとか思っていたのに時間が経つと彼のことが心配になってくる。
 時計は深夜0時を回ろうとしていた。
 僕は部屋を出て君を探すことにした。
 なんとなく行き先の検討はついている。近くの公園へ行くと、やはり彼がベンチに座って腰を丸めて俯いていた。
 僕は二つ分の缶コーヒーを買うと彼に近づいてあつい缶コーヒーを彼の髪に触れさせる。
「うわっ、あっつ!?」
 彼が顔を上げ、僕の顔を見ると気まずそうな顔をして俯いた。
「ここにいると思った」
 僕のそこ言葉に君は答えない。ふてくされるように視線をそらす。
 それを無視して僕は彼の隣に座った。
「……俺を探しに来たの? あんな喧嘩をしたのに」
「どうせ行くところないんでしょ」
 僕のその言葉に弱々しく彼は「うん」と返事した。その言い方がなんだかいじらしくなって僕は思わず微笑んだ。

3/15/2025, 2:03:29 AM