お題『記録』
現在進行系で私は『自分史上文章投稿連続一位』を更新し続けている。ひとえにこのアプリのおかげである。
お題さえ与えられればとりあえずなんでも書けはするのだが、今までそれを連続でやれなかったのは人の評価が気になるからである。
Xに投稿すれば、拡張機能を使わない限りいいね数が可視化されて、『自分の作品は受けないんだ』という事実をつきつけられたり、人気ある人がちやほやされてるのが見えてしまう。その事実に歯噛みしていた。
他の小説投稿サイトにいたっては、モノによって作者同士がいいねを投げ合い、Xで互いにリポストしあったりする文化が根付いているものもある。私にはそういう互助会的なものは無理だし続かないし、それでいいねがついても複雑な気分になるだけだ。
このアプリ、なにがいいかと言うと自分のいいね数は自分しか見ることができないこと。そして、他人のいいね数が可視化されず、ランキング機能もないこと。これが私には合っているようだった。
願わくばそういう小説投稿サイトができないかなと願っている。だが、ランキング機能がないと読むだけの読者はつかなさそうだ。難しい話である。
お題『さぁ冒険だ』
たまたま俺が村に置いてある勇者の剣を引き抜くことが出来てしまったがために次の勇者は俺に決まってしまった。
村のみんなの安心したような顔が忘れられない。だって、自分が選ばれたら怖いモンスターと戦わないといけないし、戦う度に痛い思いをしなければならない。そんなのはまっぴらごめんだ。みんなそう思ってる。
でも結果として俺が選ばれてしまった。
今日は冒険に出発する日、それなのに俺は布団の中に引きこもっている。
いやだいやだいやだ行きたくない行きたくない行きたくない。
そう思っている矢先、無理矢理布団を引き剥がされた。引き剥がしてきた主はニカッとまるでまぶしい太陽みたいな笑みを浮かべて、すでに旅衣装に着替えていた。
「さぁ、冒険だ!」
あぁ、俺は思い出した。一人、勇者に選ばれたがっていた奴を。だが、そいつは勇者の剣を抜くことが出来なかった。
さすがに落ち込むのかと思っていたら「職業案内所行ってくる!」と片腕を上げながら村から出ていった。
やる気に満ちた幼馴染にうながされるまま、勇者の剣を腰にさす。
それから俺は幼馴染に引きずられるように村を後にした。みんなの期待に満ちた眼差しに混ざって気の毒そうなものも含まれてて辛い。
ふと、幼馴染が職業案内所へ行ったことを思い出して聞いてみた。
「なぁ」
「なんだい?」
「お前、職業案内所行っただろ」
「おうっ! 行ったな」
「何に就職したん?」
「遊び人」
その言葉に思わず「は?」と声が漏れる。それって特になんの役にも立たないのでは?
戦闘になっても別のことをし始める存在。戦力にもならない。
参った。お前の性格は勇者向きのくせに勇者どころか冒険者の適性もなかったのか。いや、遊び人に失礼だけど、失礼だけどさぁ。でも、旅の最初のオトモが遊び人ってねぇよ!
俺は思いやられる先に暗澹とした気持ちになった。
お題『一輪の花』
ある時期から僕の祖母のお墓に一輪の花が供えられるようになった。お墓には似つかわしくない青のトルコキキョウだ。
その辺の花屋で仏花を買ってきた僕は気にせず毎回一緒にお墓の花瓶に入れていた。
それが今、青のトルコキキョウを携えている人に出くわした。たしか大学で講義でよく一緒になるやつだったか。
真ん中の席で目立たないように適当に授業を受ける僕と違い、そいつはいつも一番前の席にいて熱心にノートをとっている姿が印象的だった。
「いつも青い花を供えてくれたのは君だったの」
すると、目の前の男は眉をつりあげた。
「先生は青いトルコキキョウが好きと聞いたから……というか、仏花はないんじゃないの? 君、自分の祖母の好きな花も知らないわけ?」
思ったよりも感じが悪い。だけど、祖母の好きな花を知っていて供えてくれる彼は悪い人ではない。それだけは分かった。
祖母はずっと教師をしていた。祖母も忙しいだろうに僕の両親はいつも不在だったからと母親のように面倒を見てくれていた。
家の外の祖母を知らなかったけど、まさかこんなところで繋がるなんて、しかも祖母は未だに想われているなんて、その事実に胸が熱くなる。
「いつもありがとね」
「先生には世話になったからな。いろいろと」
そう言うと口をもごもごさせながら彼は僕の目の前を足早に通り過ぎていく。
僕は祖母のお墓に仏花を供えると線香に火をつけ、両手を合わせた。それから彼に思いを馳せる。
明日の講義は彼と一緒だ。それが終わったらいろいろ話を聞こう。そう決めた。
お題『魔法』
幼い頃から「魔法が使えたりしないかなー」と憧れる日々だった。多分、ちいさい時に見た魔法少女とか魔女のアニメが原因だと思う。
かわいいアイテム持って、かわいい衣装を身に着けて戦ったり人助けをする彼女たちに私は憧れた。
もうすこし成長して本が読めるようになると、今度はイギリスにある魔法学校への入学をのぞむようになった。闇の魔術に対する防衛術という響きに大いに憧れた。
だけど今、魔法少女に選ばれることも、魔法学校からのお手紙が届くことなく大人になってだいぶ経つ。
そこでふと、思う。「魔法を使う必要がないほど、世界は平和なんだ」と。そう思えばすこしは気が楽になるだろう、というなかなかに痛々しい思考を吐き出してみることにする。
お題『君と見た虹』
小学生の頃、友達と屋上で喋りながら虹を見ていた。
「ねぇ」
「ん?」
「虹って渡れるのかなぁ?」
友達のその発言に私は笑いながら
「いやいや、渡れるわけないでしょ」
と答えた。友達は顔をすこし伏せ
「そうだよね」
と言った。
「前に花に水あげてた時、虹が見えたから触ったんだ。そしたらすり抜けちゃったの」
「それはそうだよ」
「でもさ、虹を渡ることが出来たらすごく楽しそうじゃない?」
友達の目はきらきら輝いていた。
夢みたいなことを大真面目に語る彼女は、ある日突然行方不明になった。不思議なことにいろんな人に彼女のことを聞いても「そんな人いたっけ?」と返されるだけだった。
その時は途方に暮れ、あえて中学受験をして、受かった先の学校で中高と部活でわざと忙しくして彼女のことを忘れることにした。
ある部活の帰り。ふと、光る通路を見つけた。私は思わず気になって駆け寄ると、そこにあったのは虹でできた道だった。
そこで私は彼女のことを思い出す。もしかしたら、これを渡れば彼女に会えるかもしれない。
ためしに一歩踏み出してみると虹の上に足を乗せることが出来た。
虹の上を歩くと楽しそう? いいや、今はそんな楽しい気分じゃないかもしれない。彼女は今、どうしてるだろう? 会って「バカにしてごめん」とか、貴方がいなくなった後のいろんな話しがしたい。
その一心で虹の上に乗り、その先へ向かって走り出した。