お題『君と見た虹』
小学生の頃、友達と屋上で喋りながら虹を見ていた。
「ねぇ」
「ん?」
「虹って渡れるのかなぁ?」
友達のその発言に私は笑いながら
「いやいや、渡れるわけないでしょ」
と答えた。友達は顔をすこし伏せ
「そうだよね」
と言った。
「前に花に水あげてた時、虹が見えたから触ったんだ。そしたらすり抜けちゃったの」
「それはそうだよ」
「でもさ、虹を渡ることが出来たらすごく楽しそうじゃない?」
友達の目はきらきら輝いていた。
夢みたいなことを大真面目に語る彼女は、ある日突然行方不明になった。不思議なことにいろんな人に彼女のことを聞いても「そんな人いたっけ?」と返されるだけだった。
その時は途方に暮れ、あえて中学受験をして、受かった先の学校で中高と部活でわざと忙しくして彼女のことを忘れることにした。
ある部活の帰り。ふと、光る通路を見つけた。私は思わず気になって駆け寄ると、そこにあったのは虹でできた道だった。
そこで私は彼女のことを思い出す。もしかしたら、これを渡れば彼女に会えるかもしれない。
ためしに一歩踏み出してみると虹の上に足を乗せることが出来た。
虹の上を歩くと楽しそう? いいや、今はそんな楽しい気分じゃないかもしれない。彼女は今、どうしてるだろう? 会って「バカにしてごめん」とか、貴方がいなくなった後のいろんな話しがしたい。
その一心で虹の上に乗り、その先へ向かって走り出した。
2/23/2025, 1:39:29 AM