お題『ありがとう』
今日もまた一体バケモノを倒した。母親らしき女性と子供を襲っているのを見たからだ。
「ありがとうございます!」
母親が子供の頭に手をやり、一緒にお辞儀する。
何度もこういうことを続けてきたが、人を助けて礼を言われると自分が『イイモノ』になった気がする。
かつて暗殺を生業にする一族に属していたから尚更そう思うのだろう。
彼等に背を向け、しばらく歩いているとバケモノの子供が目の前に現れる。人に危害さえ加えなければなにもしないが、そいつの目から涙がこぼれていた。
「ひ、人殺しいいいいっ!」
バケモノの子供が長い爪を伸ばして俺に襲いかかる。
あぁ、またこれか。いつだって俺はそう言われてきた。
もう人を殺すのが嫌で、人から恨まれるのが嫌だから足抜けして人助けするようになったのに。
俺は無言で銃をバケモノの子供の頭に向けて撃った。見事に命中した。
頭から血を流し、事切れたのを見届けて、こいつはバケモノだ。俺は人殺しじゃない。そう自分に言い聞かせた。
お題『そっと伝えたい』
さっきから気になって仕方がない。先輩の背中にくまの形に切り抜いた紙が貼られている。
伝えようかどうしようか。でも、いきなりべりってはがしたらくまちゃんが可哀想だし、おまけに今の時代男女問わずセクハラで訴えられかねない。
さてどうするか。
私は自分のふせん(ねこの顔の形)をはがして、文字で伝えることにした。
『●●さん 背中にくまがついてますよ』
これでいいだろう。私は先輩がいないすきを見計らってふせんを先輩の机にぺた、と貼る。
しばらくして、先輩か会議から戻ってきてすこし恥ずかしそうな顔をした後、私に視線を向ける。
「これ、また娘にいたずらされたな」
「あぁ、そうだったんですね」
まさかのほっこりエピソードに私は思わず、ふ、と笑わざるを得なかった。
お題『未来の記憶』
小学生の頃、未来の出来事をふざけてノートに書いたことがあった。
その頃は本当に起こるなんて思わなかったんだ。
あれから成長して、一応いい大学出て、大手企業に就職したけどそこがまぁブラック企業で、それで地元に逃げ帰って、今、実家のコンビニの店長として働いている。
あの頃は二十世紀少年にハマってたけど、まさかその主人公と似たような末路を行くとは思わなかった。
いや、今はそこまでだったら良かったんだ。
空が急に暗くなっているのが宇宙人の秘密基地で、UFOがいくつも散らばっては人間を攻撃している。
たしかノートにそんなことを書いた気がする。
俺は恐ろしくなって実家に戻って、わめく母さんをなだめながらその場をやり過ごすことにした。
と、ここまで思い出した。
自分の中に急に流れ込んできた記憶は、未来のものだった。
こんなのはいやだ! 書き換えないと。
僕はタイムカプセルに埋めたノートを取り出すと、悪い記憶が書かれているところを破り捨て、新しく書き換える。
そう、何も起こらず、友だち全員が幸せになるハッピーエンドの話だ。
お題『ココロ』
この単語からぱっと浮かぶのは、ボカロ曲だ。
大体二十年近く前かな。というか、もうそんなに経つのかと驚く。
ココロとかいうそれはそれはとてもエモくて、泣けるストーリーが曲内で展開されていたことを思い出す。ボーカロイドの機械的な歌い方と、ココロを得た後の人間っぽい歌い方の対比が印象的な曲だ。
初めてその曲を聴いた学生時代の私は、感動して泣きそうになった。
そもそもこの時代は、劇中劇みたいなボカロ曲が多かった気がする。
今は、メンヘラだったり病んでる女の子の歌が流行るのかなといった印象。
何年経っても未だにボカロ曲を聴いたり、人が歌ってるのを好む私は、いつの間にか移り変わってた時代を改めて感じるのだ。
お題『星に願って』
小学生くらいの頃、おまじないにはまっていたことがある。
たとえば当時家で購読していた雑誌についてた女神の絵が描いてある小さなシールを鏡に貼ると綺麗になるとか、好きな人の似顔絵と自分の名前と好きな人の名前を書いた紙を常に持ち歩くと願いが叶うとか。
そういえば星に願う系もあったなぁと思い出す。
たしかなんだっけと今ネットで調べたら、最初に願い事を書いた紙に塩をふりかけて燃やして、その灰をトイレに流すとか出てきた。知らないおまじないだ。
だけど、思い返す。そういえばおまじないをして願い通りになったことってあったっけ、と。
いや、ないな。と思って、おまじないはこれからも興味本位だけで調べることにした。