お題『ありがとう』
今日もまた一体バケモノを倒した。母親らしき女性と子供を襲っているのを見たからだ。
「ありがとうございます!」
母親が子供の頭に手をやり、一緒にお辞儀する。
何度もこういうことを続けてきたが、人を助けて礼を言われると自分が『イイモノ』になった気がする。
かつて暗殺を生業にする一族に属していたから尚更そう思うのだろう。
彼等に背を向け、しばらく歩いているとバケモノの子供が目の前に現れる。人に危害さえ加えなければなにもしないが、そいつの目から涙がこぼれていた。
「ひ、人殺しいいいいっ!」
バケモノの子供が長い爪を伸ばして俺に襲いかかる。
あぁ、またこれか。いつだって俺はそう言われてきた。
もう人を殺すのが嫌で、人から恨まれるのが嫌だから足抜けして人助けするようになったのに。
俺は無言で銃をバケモノの子供の頭に向けて撃った。見事に命中した。
頭から血を流し、事切れたのを見届けて、こいつはバケモノだ。俺は人殺しじゃない。そう自分に言い聞かせた。
2/15/2025, 3:53:16 AM