お題『あたたかいね』
急いで家を出たらマフラーを忘れた。一生の不覚。おかげで首元がめちゃくちゃ寒い。
そんな時、後ろから友だちが「おはよー!」って声をかけてきた。友だちの首は長くてあたたかそうなマフラーに巻かれていた。そのおかげで友だちのちいさな頭が埋まってしまうんじゃないかと思うくらいに。
「おはよ。ってか……うぅ、さっぶ……」
と震えていたら友だちがマフラーを外して私の方にかけてくれた。突然のことに驚いていると、友だちがにこっと笑って
「これであったかいね」
と言った。ほんとだ、たしかにあったかいし、私にもマフラーをかけた状態になると友だちの頭が埋まって見えなくなる。
「ほんとだね」
私は内心友だちの優しさにときめいているのを隠して、しばらく友達とマフラーで二人三脚みたいなことをしながら学校へ向かった。
お題『未来への鍵』
またGemini芸人になってみる。
最初は、いつも通り短い小説を書こうと思っていた。Geminiにネタ出しを手伝ってもらいながらその中から書けそうなものを見つける。
だが書き始めたら、どうも自分の中で腑に落ちない部分が出てきてしまった。
そこで私はふとある考えにたどりつく。
『Geminiを使ってネタ出ししてもらいながら小説書くのって今の時代に合っているのでは?』と。
今まではネタ出しするにしても結局自分一人でやるしかなかった。だがそれをGeminiにやってもらうことで、世間的にウケが良さそうなネタを見繕ってくれる。自分ひとりで考えなくて済むのだ。
ようやく未来への鍵が入った気持ちで今はいる。
お題『星のかけら』
物心ついた時からぼんやり光るかけらを持っていた。そのかけらは「星のかけら」といい、お母さんから「それは運命の人に出会うまで、ずっと持っていなさい。決してなくさないように」と言いつけられていた。
それが納得できなくて、私は時折わざとそのかけらを簡単に見つからないであろう場所に置いておいた。運命の人は私の手で見つけるって思っていたから。
だけど、やはりかけらの存在が忘れられなくて必ず見つけ出してしまうことに複雑な思いを抱いていた。
なくしてしまおうにもなくせず、いつしか形見放さず持ち歩くようになったある日、大学から家に帰ろうかと思った矢先、かけらがひときわ強く輝きだした。
どういうことだろう、と思って顔を上げると、私と同じようにかけらが強く輝き出した男性の姿があった。
目が合ってさっかくした。彼こそが運命の人だと。
私たちはひかれるように近づき、それとなく挨拶を交わした。
何年か経って、その運命の人は今は私の夫になっている。最近、娘が産まれた。その子の手には光り輝くちいさな星のかけらが握られていた。
お題『Ring Ring...』
知人から電話がかかってきた。仲はべつに良くも悪くもない。正直、何年も会ってなかったから「もしかして宗教の勧誘か、保険の営業かな?」と一瞬思ったが、聞かないことには用件はわからない。だから出た。
「もしもし」
だが、電話の向こうから声が聞こえてくることはない。テレビの放送時間外の砂嵐みたいな音と、時折チリン、チリンといった鈴の音が聞こえるだけ。
「もしもし、もしもし!」
用があるはずじゃないのか。しだいにいらだってくる。もう切ってやろうか、そう思った時。
「ツギハオマエダ……」
そうくぐもった、ノイズ混じりの声が聞こえて電話が切れた。スマホを持つ手から力が抜け、床に落ちる。
私は状況がつかめず、しばらく放心状態のままその場に座り込んで虚空を見つめていた。だが、いつまでもこうしてはいられない。
私は知人と仲が良かった友人に電話をかける。幸い友人はすぐに出てくれた。
「もしもし!」
「もしもし、どうした?」
「昔、クラスで一緒だったAちゃんから電話がかかってきたんだけど、B、なにか知らない?」
と聞くと、友人はしばらく黙り込んでしまった。やがて電話越しに息をつく音が聞こえる。
「あの子はね、先月亡くなったの」
「え……」
突然の情報に言葉をなくした。自分に電話をかけてきた同級生がすでに亡くなっている。それが事実なら……次は、私。
(うそだうそだうそだうそだ、ありえないありえないありえないありえない)
恐怖と動揺でしばらく私は言葉を発することができなかった。
お題『追い風』
気がついたら俺は小学生になっていた。さきほどまで、スーツを着て、ビルの屋上に立ち、そこから落下したはずだ。
今の俺は長袖のトレーナーにジーンズ、黒いランドセルをしょっている。そこで俺は思い出す。
クラスのカースト上位のリーダーに目をつけられて、俺は今思えば警察に突き出してもいいんじゃないかと思われるいじめを受けて、何年も外に出られなくなり、人の顔色をうかがっていきるようになってしまったことを。
ここからやり直せば、登校拒否になることなく、引きこもりになることなく、やっと社会復帰できた就職先で初対面から上司に意味なく罵倒されることも、仕事を押し付けられて毎日終電になることもない。もう、二度と同じ轍は踏まない。
今度こそ、健全な学校生活を送り、『普通の人生』を歩むんだ。
俺は『過去の出来事を追い風』にして、未来を変える決意を固めた。