白糸馨月

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お題『星のかけら』

 物心ついた時からぼんやり光るかけらを持っていた。そのかけらは「星のかけら」といい、お母さんから「それは運命の人に出会うまで、ずっと持っていなさい。決してなくさないように」と言いつけられていた。
 それが納得できなくて、私は時折わざとそのかけらを簡単に見つからないであろう場所に置いておいた。運命の人は私の手で見つけるって思っていたから。
 だけど、やはりかけらの存在が忘れられなくて必ず見つけ出してしまうことに複雑な思いを抱いていた。
 なくしてしまおうにもなくせず、いつしか形見放さず持ち歩くようになったある日、大学から家に帰ろうかと思った矢先、かけらがひときわ強く輝きだした。
 どういうことだろう、と思って顔を上げると、私と同じようにかけらが強く輝き出した男性の姿があった。
 目が合ってさっかくした。彼こそが運命の人だと。
 私たちはひかれるように近づき、それとなく挨拶を交わした。

 何年か経って、その運命の人は今は私の夫になっている。最近、娘が産まれた。その子の手には光り輝くちいさな星のかけらが握られていた。

1/10/2025, 3:41:38 AM