白糸馨月

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5/10/2024, 4:02:54 AM

お題『忘れられない、いつまでも』

 私の目の前で女が土下座をしている。待ち望んでいたはずの光景なのに、私は自分が驚くほどなんの感情がわかないことに気がついた。
 私は、中学生の頃、今土下座をしている女に目をつけられいじめられていた。多分、その女よりも成績がいいからだったというそれだけの理由。
 事あるごとに教科書やノートを捨てられたり、体操着を隠されたり、嘘の噂を流されたり、みんなの前で私の声真似をしたり。そんな不愉快なことが続いて、不登校になるのは悔しいからその女と同じクラスでいる間は耐えた。
 それでも、何年かは、中学や高校、大学生になった今でも時々彼女の顔が出てきてはやり場のない怒りにさらされていた。
 その女が今、土下座をしている。それはなぜか。

 たまたま同じ地元のスーパーのバイトが一緒になった。なにもしてこなければ、挨拶もせず、初対面のふりをしてやり過ごそうと思っていた。本当は、ひどいことをしてやりたかったけど。
 だが、あの女は中学の時と同じように私についての悪い噂を流そうとした。だから、私は反撃したのだ。
 なにをしたかというと、同じバイト先の人に『あいつにいじめられていた』という事実を触れ回ったのだ。
 私は自分で言うのもなんだがバイト先からの信頼を得ている。仕事も出来ると思われている。だから、後から入ったいじめっこが孤立するのは時間の問題だった。

 ある時、私がその女とたまたま二人きりになった時、「いじめだと思ってたの? ごめんね」と言った後、猫なで声で「だからぁー、あたしの噂取り消してくれないかなぁ?」と言いやがったのだ。
 だから、私は出来るだけ冷たい声で言った。

「いいけど条件がある」

 いじめっこの額に血管が浮き出たのが見えた。私はそれに屈さず続ける。

「地元の公園でさ、土下座してよ」

 向こうは最初キレていたが、「それやらないと噂取り消さない」と言ったら、帰り道、地元の公園でしぶしぶ土下座していた。
 いつかやらせようと思っていた。だが、実際目の当たりにすると本当に何の楽しさも湧かないことに気がついた。
 その女は顔を上げる。

「ねぇ、やってやったんだから気が済んだでしょ!」
「なるほど、反省してないんだね」
「するわけないじゃん! ってか、いじめって騒ぎ立てんじゃねーよ、あんな大した事ないこと!」
「あっそう。なら、取り消さない」
「くそっ。あんたのくせに!」

 私はしゃがんでじっとそいつの顔を見つめる。私の時はうわばき履いた足で頭を踏みつけられたっけなぁと懐かしむ。だが、私はそんな低レベルのことはしない。ただひたすら見つめるだけ。

「気持ち悪いんだよ、なんだよお前」

 って言われても私はずっとその女の反省しない顔を見つめ続けた。いつまでも忘れられずにいたことが、ここにきて仕返し出来たのに、驚くほど楽しくもなく、ざまぁ展開が訪れた時の汚い爽快感もなく、ただ

(やっぱり、一生許さないし、ずっと忘れてやらない)

 と心に誓っただけだった。

 

5/9/2024, 3:06:53 AM

お題『一年後』

 毎年のようになにかが変わっているといいな、とその時は思う。たとえば、恋人が出来ていればいいなとか、より残業が少ない部署に行くことが出来ればいいなとか、給料が上がっていればいいなとか。
 けれど、今振り返ってみると結局去年どころか、数年くらい生活がなにも変わらなくて、ある意味諦めてる節があるんだよね。

5/7/2024, 11:00:13 PM

お題『初恋の日』

 ついにこの日が来たか、と私は日記帳を開く。今日、私は見ているだけで胸がときめく人に会った。
 出会ったのはバイト。今日来た新人は、背が高くて細くて、目が前髪で隠れていてミステリアスな感じで、私の心を鷲掴みにした。今まで女の子しかいない学校に通っていた私は、はじめて感じる胸の高鳴りに「これが恋!?」とさっかくした。
 だから今、こうして日記を書こうとしている。
 どこかの作家じゃないけど、「今日は初恋記念日♡」としめくくるつもりだ。

5/6/2024, 11:28:29 PM

お題『明日世界が終わるなら』

「なぁ、明日世界が終わるならどうする?」

 放課後の夕日が沈みかけてる学校の屋上。友達からそんなことを聞かれたから、「急にどうしたんだよ」と返した。

「昨日アルマゲドン見てたら、ふとそんなこと思っちまってさ」
「映画の影響受けすぎじゃね?」
「ま、そうなんだけどさ。で、どうなのよ?」
「あー……そうだなぁ。いつもと変わらず過ごす」
「なんでよ」
「だって、どうやったって世界が終わることなんて抗えないじゃねぇか。なら、いつも通り過ごすしかないと思うんだ。んで、そういうお前はどうなんだよ?」

 逆に聞いたら友達が空の遠くの方に視線を向けた。

「俺は、好きな奴に告白するかな?」

 そんなこと、初めて聞いた。

「えっ!? お前、好きな奴いんの? 誰?」
「おしえねーよ」
「なんでだよ。俺には教えてくれたって」
「出来ればこの想いは、墓場まで持っていきたいから」

 そう答えた友達の顔がどこか寂しそうで、俺はこれ以上聞くに聞けなかった。正直、高校に入って以来三年間ずっとつるんできた友達だ。教えてもらえないことにすこしの寂しさを感じつつ、いくら友達といっても踏み込んではいけない領域ってあるんだなと感じた。

5/5/2024, 8:59:48 PM

お題『君と出逢って』

 日常に退屈していた時にYoutubeの動画をなんとなくいろいろ見ていたら君と出逢った。
 たまたま聴いたドラマトラック。君は顔が良くて、見た目が少年みたいに可愛いのに裏の顔がイケメンというかっこいいギャップがあって、それを聴いた次の日、気がついたら君が出ているドラマトラックが入ったCD全巻分が私の手元にあったんだよね。
 君と出逢ってからの世界は華やかになって、君について考えることが毎日楽しくて、いつの間にか数年が経った。
 今も相変わらず君が出ているコンテンツを推していて、ずっと楽しいまま。これからも推していきます。

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