「君からのLINE」
送る。送らない。いや、やっぱり送ろうかな……。
こんな文章でいいのかだとか、もっといい話題はないのかだとか、これじゃあすぐに会話が終わってしまうだとか、様々なことを考えてしまい、文字を打っては消して、打っては消してを繰り返すこと数十分。
LINEを送る。
たったそれだけのことにここまで悩むなんて。LINEがなかった時代は恋文で思いを伝えたんだと親から聞いたが、今も昔も思い人に文字を送るという文化は変化していないのだなと感じる。
相手のアイコンをタップし、プロフィール画像を観察する。本日、あるいは本時、六回目の観察である。
プロフィール画像をみてセンスいいなとか、ステメを読んでこんなこと考える人なんだなとか、あたかも初めてみるかのような反応をしてしまう。六回目なのに。
うぅー!と唸り声を上げながら枕に顔を埋め、だらしなく足をバタバタと上下させる。
やっぱりやめようかな……。
文章を送るだけでこんなに体力を使っては他のやるべきこともできなくなってしまう。
ごろりと寝返りをうち、仰向けになって考えていると手元のスマホが振動した。
驚いて上体を勢いよく起こしてスマホの画面を見ると、先ほど悶々とLINEを送るか否か考えていた相手からだった。
暫くロック画面を眺めていたが、表示時間が経過して暗くなったことによって目が覚めた。
スマホをタップし、ロック画面を表示させる。それをスクショして、すぐにLINEを開く。
やっぱりメッセージ送ろう!
数日はあなたからのLINEが来たという事実だけで天へと昇れそう。
「大好きな君に」
3月。
それは、始まりへの終わりの季節。
先輩が卒業する季節。
きっかけは些細なことだった。書道部に所属している私は、先輩の書く字に惚れた。
繊細で、且つ、字の先端まで生きてるような大胆さも持ち合わせている。そんな先輩の字に惚れた。
たったそれだけのことだった。
字に惚れただけだったのに、いつしか先輩自身に惚れ始め、今や大好きな先輩の字すらも直視できないほどにこの思いは膨れ上がっている。
***
卒業式は本来なら在校生は出られない(体育館の狭さの関係で)。
しかし、私は寒空の中、先輩が学校から出るのを待った。
卒業式が何時間かかるかも知らず、ただただ、先輩にこの思いを告げるために待ち続けた。
やがて、校舎からワラワラと人が出てきた。
私は目を凝らす。
先輩を探す。
先輩は最後の方に出てきた。殆どはもう帰路についていたところだったため、探すのは容易だった。
「先輩!」
私は先輩の方に駆ける。
先輩は私をみて驚いているようだったが、すぐにいつもの優しい笑顔を向けて
「伝えたいことがあったんだ」
と、私が思いの丈を述べるよりも先に先輩が口を開く。
「伝えるのが遅くてごめん。――大好きな君に」
それを聞いた瞬間、私の目からは大粒の涙が零れ落ちた。
「10年後の私から届いた手紙」
さて、10年後の私は何をしているでしょうか。
答えは内緒にしておきましょう。だって、未来を知ったら私、絶対に努力することをやめますから。
今も昔も変わらず、お気楽極楽ワンダホイな生活を送っていると思っていてください。
未来に期待はしない方がいいですよ。
信じるのは今しかないのだから。
「バレンタイン」
バレンタインはいい風習。
少なくとも私にとってはそう。
だって、バレンタイン当日になれば推しからの供給が来る。公式からの供給が来る。
加えて、二次創作も活発になって、推しCPの二次創作やファンアートも出回る。
バレンタインがなければ見られなかった光景だ。
決して、誰からもチョコを貰わなくて悲しいとかそういうのではない。
「待ってて」
雨が止むまでここで待ってて。雨が止んだら帰ってくるから。
彼女がそう言ったから僕は待っている。
しかし、待てど暮らせど雨が止む気配はない。
この四阿の中で待っていますよ。
そう大きな声で空に向かって言ったが、返答は雨音のみ。仕舞いには雷を伴っている。
彼女は戻ってくるのだろうか。
僕のことなんて忘れて――