街な、行と圭だ
行とは十字の路を模した図が元だ
圭とは古代の天子が貴族に与えた身分を示す宝玉だが、そこから転じてしるしの意味だ
十字の交差の中心にしるしがあるんだ
街には道があるだろ?
道は、首と辶だ
辶とは辵で十字の路を足で歩む図が元だ
殺した相手の首を持って部隊を率いて進むんだ
それで十字路なんだが、そこには首を埋めるんだ
なんでって言われてもな、わたしは知らない
そうして道は集まり大路となって新しい街となる
多くの知恵や命が交わり消費されて発展するのが『街』なんだろうが、そこに至るためにいったいどれほどの首が埋められたんだろうなぁ?
……まぁ、あまり信じるな
『やりたいこと』
なんにもないなぁ。まるで、なんにも思いつかない。やれそうなことはやってるから、やりたいことは今は特に持ってない。できればそういう「なんにもしてない」がしていたいかなぁ。
何がやりたい?って昔からとても苦手な質問で、一番古い記憶のはじめっからぐずぐずだった。曖昧すぎるくせに偏屈でよくある頑固な精神性で、うまく選べないし答えられないしで叱られてばかりだったんだよね。だから今も何か望むって心が竦んじゃうし許可求めちゃうし頭も真っ白。聞かれなければたいして気にもせずに自分のやりたい速度であれこれ取り組んでたりもするけれど、ほとんど共有しないから結局はなんにもしてないのと一緒って感じ。
日が昇り始める朝方は静かで良い。
夜のうちに冷えた空気も心地良い。
時が始まる清新さにも身が締まる。
『朝日の温もり』
何事も忘れた顔で笑む姿が美しい。
前日の空模様などお構い無しだな。
今日もお前が幸せならそれで良い。
たいして迷うこともなく見知った道を進んでいるだけなのに分かれ道では無用に悩む
軽い決断と覚悟を迫られた時には、これこそ岐路だと手軽な選択を積み重ねる
そうして選んだ分かれ道こそ正しい道だと歩みを進める
だがおそらく『岐路』ってもんはそうじゃない
それまでの生き方や価値観でやりくりできた道の質が、突然変容することだ
こちらの準備とは無関係にやってきて、己の生き様を問われることだ
中庸なんてものは無いぞ
時間も待ってはくれない程に短く素早い
隠してた自己が引っ剥がされて粉々になる
そうして選ぶしかなかった分かれ道を静かな怒りで進むことだ
もうずっと世界が終わった後の時間を生きてる気分でいるけど、未だに私は寝て起きて息をしてるよ。
あの頃は世界の全てが色鮮やかで人のカタチが美しくて、毎日美術館の中を歩いてる気分だった。だから私はあんなに怯えていて、辛くて怖くて逃げ出したくて、路傍の石の裏っかわに紛れ込もうと躍起だった。それがある日、観光地の望遠鏡みたいに時間切れで暗転したのは覚えてる。きっとあそこは世界の果てで、私の世界の終わりだったんだろうね。
私はそれ以来、狭い世界の卵の殻に独りでずっと篭ってるけど結構気楽で静かで気に入ってるの。この世界も終わるとき、私も鳥になって神に向かって飛ぶから、そのときはまたあなたと積もる話がしたいと思うの。
『世界の終わりに君と』