こんな夜があってもいいと思った。
ベランダに1人、梅酒のロックを片手に寝静まった住宅街を眺めて、空には満天の星空。
愛する人も、可愛らしいペットもいない、寂しい夜だけど、でも。
私はわたしでとても幸せだ。
明日からもまた、この時間を守るために私は働く。
……それでもいつか、本当に好きな人ができたら。
この時間を共有してもいいのかもしれない。
最後にもう一度と空を眺めたら、流れ星が走っていた。
『ミッドナイト』
顔が見えない。
太陽の光を背負った君の顔はよく見えなかった。
でも泣いてるにおいがしたの。
あんなに晴れてて、綺麗な青色の空をバックに君は泣いてた。
ねぇ。
君を泣かせるのは誰なの。
君の全てを私が守るから。
私は迷わず君に手を伸ばす。
逆光で遠かったはずの君は全然遠くなくて、
太陽と汗の匂いがした。
『逆光』
たとえるなら、そう。
真っ白な雪を踏みしめるような夢。
あまいあまい綿菓子を口の中で溶かすような夢。
あなたが夢の中で微笑んでくれた。
今はもう会えないあなたが、幸せそうに。
キスの感触もやけにリアルで。
あぁボクも死ぬんだと気づいた。
迎えに来てくれてありがとう。
『こんな夢を見た』
「過去と未来、どっちに行きたい?」
なんて君は言う。
「んー…未来、かなぁ…」
「どうして?」
「過去に戻ったって過去は変えられないでしょ?」
「そうとは限らないじゃん?」
「でも、君と出会えなかったから。未来で君と幸せになりたいもの。」
そっか。と君は笑う。その笑顔がどこか寂しげだった。
それが気のせいじゃないと知ったのは、君にフラれた3ヶ月後だった。
再会は、君のお墓の前で。
「……はじめて、過去に戻りたいと思うよ。」
君は未来を見たんだね、君だけのタイムマシーンで。
あの日。唇を噛み締めるのが泣きたいときの癖な君が唇を噛み締めながら別れようといった日。
あのとき無理矢理にでも抱き締めて、絶対に離さないと言えば良かったと。
『タイムマシーン』
あなたをはじめて見たのも、こんな風に月が綺麗な夜だった。
「……風引きますよ?」
僕は彼女に上着を被せた。
「…貴方に追いかけてほしかったから…?」
彼女は艶やかに微笑んで、僕の手を握る。
あなたが好きです。
この言葉を言えたらいいのに…。
貴方に出会えた夜はただそれだけで特別で。
『特別な夜』