咲人

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3/25/2023, 1:43:48 PM

思い出の側面は
今日の積み重ねでしかない

見たことのない明日や未来なんかより
よっぽどお馴染みの
いつからか分からないくらい昔から
一緒に歩いてきた「今日」という日の積み重ね


喜んでいたのは本当か
苦しんでいたのは本当か
迷っていたのは本当か
付き合っていたのは
夜にすれ違ったのは
一緒に暮らしていたのは
本当は好きじゃなかったのは
嫌いと言い切ってしまったのは
夜の波の音を二人で聴いていたのは
桜並木道を手をつないで歩いていたのは
朝日刺す眼の痛みに耐えて家路につくのは
卒業したのは
涙を流していたことは

ホントウだったのか



今日を積み重ねた。
「好きだ」と言った。


確かに、そう言った。



【好きじゃないのに】

3/24/2023, 12:28:03 PM

寝苦しい夜にせきこんだのは
体が溜め息つくなって言ってるんだ

「ずっと一緒に居れると思ったよ」
別れ際に捨てるようにして転がした言葉は、

嘘だった

本当は知っていたから
「ずっと」なんてないって

今よりももっと、あの頃は知っていた

君が「ずっと」を信じさせなかった

だけど、初恋じゃない初めての恋だから
「あの言葉は嘘だったけど、
悲しいくらいに本当だった」

寝苦しい夜せきこんで窓を開けると
雨が降っていた

水溜まりに街灯が反射してより明るく見える

君のところはきっと晴れているんだろう



【ところにより雨】

3/23/2023, 12:52:17 PM

照れくさくて言えなかった
「一緒に帰ろう」も
独特のフォームで校庭を走りつづけることも
くせ字に込められたら優しい想いも
偶然の再会も
暖かかった冬の闇と、
眼を閉じた暗闇を重ねた夜も

二人で佇んでいたのは
おおきなイチョウの木の下
少し目線を下げる
目を見て話を聴く癖のある君と
見つめ合った二度目の再会の夜

過ぎるからこそ
記憶をたどるからこそ

昨日あの道で
誰もいないことを知りながら振り向いたのは
キリトリ線を越えたから




【特別な存在】

3/21/2023, 1:37:52 PM

幸せな日々というものは
限りなく薄く延ばされている

それは無限に続くんじゃないかって
思うほど

だから気づけないだろう

絵になる
唄にできる
詩を書かずには居られない

そんな「幸せな日々」をしていただけなのに

世界に僕たちしか居なかったあの日
そう思っていたのは僕ひとりだったようで

君はうつむいて
「ごめんなさい」とだけ言った

夏目漱石が
「月がきれいですね」と訳した言葉を

咲人が「ごめんなさい」と訳したのは
その風景に抱きしめられているから
その言葉が僕を殴るから


無限に続くものはない
そう、信じているだけだ。

ただ、信じている間だけは
確かに僕らは無敵だった。





【二人ぼっち】

3/20/2023, 10:48:31 AM


言葉のナイフが傷つけて
君はひっそりと涙を流すだろう

その涙の中を
きれいな魚が泳ぐかもしれない
その瞳の宇宙で
寂しげな虹がかかるのかもしれない

それを僕が知ることはない
そこに傘をさしに行くことができない

それが何よりも悲しい

醒める前の夢の中だったとしても

また出会う頃には
言葉のナイフの傷は
跡すら残さずに消えているのだろうから





【夢が醒める前に】

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