お題 降り止まない雨
雨が降っている。
あの日と同じだ。
運が悪い。
雨なんか大嫌いだ。
大好きな、いや大好きだった君を
思い出してしまうから。
あの日も確か強い雨が降っていた。
僕は傘を持っていなくて、昇降口でただただ呆然と立ちすくんでいた。
みんな帰って、いよいよどうするかと
頭を使い始めた時に君は現れた。
「この傘良かったら使って?」
少し首を傾げながら紺色の折り畳み傘を手渡してきた。
困っていた僕は、ありがたくそれを
受け取った。渡された時に触れた手が妙に熱くなった。
これが君と僕の出会い。
傘を返す時に、そういえば君のことを何も聞いてないことを思い出し
返すのに一苦労した。
でもその後に
君と仲良くなれたから、そんな苦労すら良かったと思っている。
初めて会ってから3ヶ月後、僕たちは当たり前のように付き合い始めた。
それから1年間、とても幸せな時をすごした。
時々君は体調を悪そうにしていたけど、生まれつき体が少し弱いと言っていた。
僕はそれを信じてなるべく室内のゆっくりとしたところで遊ぶこと増やした。
映画に行ったり、お買い物をしたり、植物園に行ってみたり。
本当に君のことを大事にしている
つもりだった。
それでも今、僕は振られた。
最近いっそう体調が悪い時が多くなったように見える君。
僕はこれからも支えていくつもりだった。
でも今この状況になって
初めて僕が君に支えられていたことを知った。
本当に辛いよ。
君がいない世界は。
なんで僕は振られたのか聞いても
〝私が悪いから〟
としか言ってくれない。
これじゃぁ諦めきれないよ。
しょうがない事だとわかっていても
僕の心にも晴れは訪れない。
幸せだったことを考えながら流す涙は
止まることを知らない。
今日が雨でよかったとも思える。
傘を持っていない僕は雨に涙を隠してもらいながら、鉛のように重たい体を引きずって帰った。
この時君も涙を流していることを
僕が知ることはなかった。
お題 あの頃の私へ
あの頃の私へ
大丈夫。ちゃんと中学生にも高校生にもなるんだよ。
あの頃の私へ
たくさん習い事をして忙しくても、勉強少しは頑張ってね。
あの頃の私へ
孤立している今は怖いかもしれない。でもそれは後に
自分で生きていくのにきっと役に立つよ。
あの頃の私へ
今目の前にいる大好きな人を大切にしなさい。
せっかく出逢えた運命の人だから。
あの頃の私へ
親友が横にいてくれる事は当たり前ではありません。
1番の味方を大事にしてください。
あの頃の私へ
きっと今は辛いでしょう。
でもその失恋を乗り越えた時、自分を磨くきっかけをくれた人となります。まだ世界は終わっていません。
あの頃の私へ
もっと自分を大切にしてください。
あの頃の私へ
辛いならどこかに吐き出してください。きっと受け止めてくれる人がいます。
あの頃の私へ
辛いことからは逃げてください。
逃げる勇気がないことがいちばん弱いことです。
あの頃の私へ
もっといいことを探してください。
無理にでも口角をあげてください。
小さな幸せを見つけてください。
お願いします。
数分前の私へ
もう、最善を信じます。
過去の自分に言いたいことなんて山ほどある。
これが〝後悔〟というものなのだろうか。
そう思うと、人間は多くの後悔を抱いて生きているのか。
これは辛いのか、悲しいのか。
私は、あの頃の私に言いたいことがあっても、まだそれが
後悔だと気づけていない。
だってその頃はそれが最善だと思っていたから。
常に最善を意識して生きることは、きっと後悔を
減らすことに繋がったのだろう。
だから私はこれを最善と信じ、
終わりであり、始まりを信じる1歩を屋上から歩みだした。
お題 逃れられない
「しょうがないよ。逃れられない運命なの。」
なんで、諦めてしまうんだ。
まだ助かると思わないのか。
「今まで沢山沢山頑張ってきたけど、
どうにもならなかったんだもん。」
それは、確かに僕には想像できないほど頑張ったのだろう。
でもさ、まだ諦めないでよ。
無意識に涙がこぼれる。
ちょっと前の頃よりの痩せた君が困ったように笑う。
そんな彼女の声が今にも泣きそうなのが
余計に悲しくなる。
「きっとまだ時間はあるからさ、いっぱい思い出作ろ?」
君と思い出を作れることは嬉しい。
でも今後、そこに行くことが怖くなりそうだ。
君とのことが全て思い出になることが怖い。
「大丈夫。怖がらないで?我儘なのはわかってるけど
私の最期は君といたい。」
まっすぐこっちを見て言われて、思わず目を背けた。
「だめかな?」
首を傾げて悲しそうな顔をする君。
あぁ、そんな顔をしないでくれ。
君にはいつも笑っててほしいんだ。
『いいよ。わかった。作ろう。2人だけの思い出。』
あんな顔をする君に言われたら
こうなることからは逃れられない。
僕たちは今日も定められた運命の中で生きているのだ。
お題 透明
「ねーね?透明って何色だと思う?」
こいつはいきなり何を言い出すんだ。
透明は色がないから透明なんだろ。
「私はね、透明大好きなんだ。」
そもそも透明について考えるなんて
やっぱりこいつはどこか普通と違う。
「私たちが普段見ているものって色があるもの
ばかりでしょ?だって色がないものは見えないし。」
それはそうだ。存在感が全くないと思う。
「でもそれはさ、色があるものばかりが目立ってるだけで
窓とか風とか透明は必要な色なんだよ。」
そういうものなのか。
「そこにあるのが普通すぎてみんな意識していないだけ。」
意識してないんじゃ可哀想だな。
「透明って、君と同じだと思うんだ。」
どういうことだよ。
「クラスでは陽キャばっかり目立つから、いつも教室にいた
君は、そこにいるのが普通すぎて意識されてなかったね」
さらっと酷いこと言うな。
「それでも細かくても大事なことをいつもやっていた君は
クラスでは必要だよ。」
気づいてたのか。
「それにさ、」
まだ何か言う気か。
「私の大好きな色だし!」
またそんなことを言う。
僕も同じ気持ちだ。
早くそう言いたいのに、
今現在意識のない僕にはどうしようもできない。
数週間前に事故にあった。
そこから僕の意識はずっと戻っていない。
そんな少しの反応もできない僕に、君は毎日こんな話を
するためこの病室に通ってくれている。
あぁ、本当に早く君の顔を見たい。
君の目を見ながら、君に好きだと伝えたい。
早くそんな日が来ることを今日も心から願っている。
お題 突然の別れ
別れは突然やってくる
人間の命なんてとても儚い
生きていることの方が奇跡である
だってそうだろう?
この世にはまだまだ解明されてないことが多くある
そんな未知で不安定な世界で今日も生きている
不安定な世界で今日も明日の奇跡を信じて生きている