お題 透明
「ねーね?透明って何色だと思う?」
こいつはいきなり何を言い出すんだ。
透明は色がないから透明なんだろ。
「私はね、透明大好きなんだ。」
そもそも透明について考えるなんて
やっぱりこいつはどこか普通と違う。
「私たちが普段見ているものって色があるもの
ばかりでしょ?だって色がないものは見えないし。」
それはそうだ。存在感が全くないと思う。
「でもそれはさ、色があるものばかりが目立ってるだけで
窓とか風とか透明は必要な色なんだよ。」
そういうものなのか。
「そこにあるのが普通すぎてみんな意識していないだけ。」
意識してないんじゃ可哀想だな。
「透明って、君と同じだと思うんだ。」
どういうことだよ。
「クラスでは陽キャばっかり目立つから、いつも教室にいた
君は、そこにいるのが普通すぎて意識されてなかったね」
さらっと酷いこと言うな。
「それでも細かくても大事なことをいつもやっていた君は
クラスでは必要だよ。」
気づいてたのか。
「それにさ、」
まだ何か言う気か。
「私の大好きな色だし!」
またそんなことを言う。
僕も同じ気持ちだ。
早くそう言いたいのに、
今現在意識のない僕にはどうしようもできない。
数週間前に事故にあった。
そこから僕の意識はずっと戻っていない。
そんな少しの反応もできない僕に、君は毎日こんな話を
するためこの病室に通ってくれている。
あぁ、本当に早く君の顔を見たい。
君の目を見ながら、君に好きだと伝えたい。
早くそんな日が来ることを今日も心から願っている。
5/21/2024, 11:49:55 AM