お題 逃れられない
「しょうがないよ。逃れられない運命なの。」
なんで、諦めてしまうんだ。
まだ助かると思わないのか。
「今まで沢山沢山頑張ってきたけど、
どうにもならなかったんだもん。」
それは、確かに僕には想像できないほど頑張ったのだろう。
でもさ、まだ諦めないでよ。
無意識に涙がこぼれる。
ちょっと前の頃よりの痩せた君が困ったように笑う。
そんな彼女の声が今にも泣きそうなのが
余計に悲しくなる。
「きっとまだ時間はあるからさ、いっぱい思い出作ろ?」
君と思い出を作れることは嬉しい。
でも今後、そこに行くことが怖くなりそうだ。
君とのことが全て思い出になることが怖い。
「大丈夫。怖がらないで?我儘なのはわかってるけど
私の最期は君といたい。」
まっすぐこっちを見て言われて、思わず目を背けた。
「だめかな?」
首を傾げて悲しそうな顔をする君。
あぁ、そんな顔をしないでくれ。
君にはいつも笑っててほしいんだ。
『いいよ。わかった。作ろう。2人だけの思い出。』
あんな顔をする君に言われたら
こうなることからは逃れられない。
僕たちは今日も定められた運命の中で生きているのだ。
5/23/2024, 11:13:31 AM