愛颯らのね

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5/8/2024, 1:09:39 PM

お題 1年後


1年あったら、みんなどのくらい変わるのかな。

勉強が得意になる人。
恋人ができる人。
お友達が増える人。
得意なことができる人。

でもきっと、いい事ばかりではない。

家族がなくなってしまう人。
勉強についていけなくなる人。
学校に行けなくなってしまう人。
恋人と別れてしまう人。

私の一年後は、奇跡でも起きない限りいいものではない。

1年後で私を待っているのは〝死〟だから。

周りの人、特に今目の前で泣いてる君は奇跡を強く信じてる

でも私は違う。

奇跡なんて都合のいいものは存在しない。

これは私の生きてきた17年でしっかり証明されている。

本当は今そうやって言ってやりたいけど、今君に言ったら
きっと収拾がつかないほど泣いてしまうだろう。
(もう手遅れな気もするけど)

この1年は、私にとって最後の1年。

私はずっと前から心の準備はできていた。

それは彼も一緒だと言っていたが
実際、余命1年とは想像よりもはるかに恐ろしいものだった

高校生にもなった男が声を上げてわんわん泣いているのが
何よりも証拠だ。

「ねね。あと1年になったからさ、前言ってたのやろうよ」

『…あれ、本当にやるの?』

「もちろん!どうせならなにか残しておきたいし。」

残しておきたいという言葉に、また彼は少し
顔を歪めた。

〝あれ〟というのは、もし私に余命宣告されることが
あったら、私たちの今までの人生を小説にして書く
というものだった。

入院が多かった私と、よくこの部屋に来てくれていた彼は
よくここで本を読んでいた。

そこで私は、人生で1度くらい書いてみたいと思ったのだ。

でも私は飽き性だから、彼と一緒に書こうってわけ。

「いいよね?」

少し止まったあと、控えめに頷いてくれた。

「やった!そうと決まれば早くやろ!」

こうして私たちの人生を振り返っていった。

笑ったり、時々君が泣いたりしながら
たくさんたくさん時間をかけて、書いていった。

思い出話だけで終わってしまう日もあった。
とても楽しい日々だった。
本当にずっと続いて欲しかった。

それでも、完成が近づくにつれて、だんだん私の
元気はなくなっていき、早1年が経とうとしていた。

最後の力を振り絞って、君に伝える。


「この物語の最後は、君に託したよ。」


5/7/2024, 1:01:07 PM

お題 初恋の人

初恋の人、思い出すとぐーっと胸が苦しくなる。

まだ中学生だった私の甘酸っぱい恋。

私が人生で1番好きだった人。
まだ好きかもしれない人。

一日中彼のことを考えていた。

夢の中にもいつも彼がいた。

好きだなって気づいたのは
ある日、私が座って君のことを見つめていた時、
彼は少し手を丸めて
「そんな目で俺を見るな」
って少し照れながら言われた時。
触られたところが、妙にドキドキじんじんとした。

その時の手の温かさが今でも忘れられない。

特別扱いも沢山してくれた。

学校帰りに一緒に帰って、近くの公園で毎日喋った。

私が分からないところを、私がわかるまで
分かりやすくして教えてくれた。
2人っきりだったのが、嬉しかったけど緊張した。

髪の毛をといて、結んでくれたこともあった。
綺麗なポニーテールだったな。

毎日毎日楽しかった。

そんな私の初恋は一瞬で崩れて、なくなった。

いっぱいいっぱい好きにさせてきた彼には、彼女がいた。
2年ほど付き合っていたそうだ。

当時中学生私にとって2年とはとてもとても長い時間だった

諦めたくなかった。絶対私のが彼のことが好きだと
確信できるほど好きだった。

それでもどうしようもなかった。

彼がこっちを見てくれることはなかったし、
私が告白することもなかった。

何度も好きだと言おうとした。
でもその度浮かんでくるのが、顔も知らない彼女さん。

そうやって私の初恋は終わりを告げていった。


…はずだったんだけどね。

5/6/2024, 11:53:40 AM

お題 明日世界が終わるなら


「ねね。これみて。」
歩きスマホは危ないぞと言おうと思ったのをやめ、スマホを覗き込む。
そこに書かれていたのは、明日でこの世界が終わるという
占いが出たという、いかにも胡散臭いニュースだった。

なんにも、その占い師は今までに多くのことを
予言し、ことごとく当ててきたそうだ。

まぁ、俺は信じてないけど。

『こんなの俺は信じないよ?』

「それは私も一緒。でもさ、想像してみるのはいいじゃん」

それもそうだ。

『君だったらどうするの?』

「んー美味しいものいっぱい食べる。
あと、ママとパパにいっぱいありがとうって言う。」

君らしい回答だなって思う。

『じゃぁ、幸樹だったらどうするの?』

俺だったらか。
少しだけ、面白い回答をしたいと思ったのは
君の驚く顔が見たかったから。

「好きなやつに告る。」

『え!?あの幸樹が!?嘘でしょ!?好きな人いるの!?』

なかなか失礼なやつだ。
俺だって人生で1人くらい好きな人がいるのに。

『ねね。どんな人どんな人?かわいい?』

「んー時々失礼で鈍感な人。」

『なにそれ。本当に好きな人なの?』

「うん。昔から。」

『へぇ〜。まぁ世界が終わるとならないと送れないのは
幸樹っぽいけどね。』

「じゃぁお前は告れるのかよ。」

『もちろん!やってみようか?』

やってみようか?もう好きなやつがいたのか…
LINEでも送るのかな。

振られちゃえばいいのに

なんて思いたくもないけど、思ってしまう。
こんな俺が嫌いだ。

君大きな目でこっちを見ている。

やめろ。そんな目で見るな。これ以上好きにさせるな、

『…好きだよ?幸樹』



『ずっと昔から大好き』


『でも、幸樹には好きな人がいたんだね。ざーんねん』

「ちがっ。俺が好きなのは──」

昔から君だけなんだよ。彩春。

そういうと君は溢れんばかりの笑顔で
俺に抱きついてきた。

これが俺らの幸せの始まりだった。

5/5/2024, 1:08:49 PM

お題 君と出会って


君と出会って私の人生は大きく変わった。

死にたがりの私に楽しさをくれたのは君だった。

だから私のヒーローだね。

喧嘩もいっぱいしたけど、好みはどんどん似ていった。

考えることも一緒になっていった。

今では喋らなくても君が言いたいことがわかる。

それはきっと君も一緒。

私たちはずっと一緒だった。

毎日毎日いっぱい喋った。

それでも私たちは喋り飽きなかった。

いつまでもいつまでも喋って、笑い続けると思ってた。

──あの日が来るまでは。


その日、私たちはいつもの場所で待ち合わせをしてた。
少し寝坊した私は、少し急いでそこに向かった。

案の定、そこにはもう君が待っていた。

道路を挟んだ向かいの場所。

私は信号が青なことを確認して渡った。

だけど、気づくと何かに突き飛ばされていた。


目の前に広がるのは血紅色。

そして、そこにいるはずのない私のヒーロー、時ちゃんが
倒れていた。

「時ちゃん!」

時ちゃんが私を助けてくれたんだ。
あの衝撃は時ちゃんが私押したんだ。

そのせいで、時ちゃんが。

すぐに近寄ったが、圧倒的な出血量。
動かない体。冷たくなりつつある時ちゃん。

あぁだめだ。私を庇って時ちゃんは死ぬんだ。

自然と涙が零れる。周りの人の声が雑音にしか聞こえない。
私は時ちゃんにずっと声をかけ続けた。
届かない声を送り続けた。

しばらくして、遠くから救急車の音がした。

そこからのことは、あまり覚えていなかった。


そして今日、時ちゃんの命日から49日。

私は今、学校の屋上にいる。

久しぶりに学校に来たから、ほんの少しだけクラスメイトが
騒いでいた気がする。

でも声をかけてくれる人は私にはいない。

だからもう、何も気にせず会いに逝ける。

時ちゃんは今日、きっと天国に行く。

私は今日、殺人を起こす。

自分殺す。

だからきっと地獄に逝く。

それでもいい。こんな世界もう嫌だ。

少しでもヒーローの近くにいたいから。

今から逝くね。時ちゃん。

5/4/2024, 11:08:55 AM

お題 耳を澄ますと


耳をすまして聞こえてくるのは、青春の詰まった音。

吹奏楽部の少しズレた音。
運動部の大きな声。
時々廊下を歩く生徒の楽しげな声。
怒鳴る顧問の声はあまり好きじゃないな。

こんな音の中に入れてないのが私。

私だけの屋上で空を見ながら耳を澄ます。

これがいつもの私。
世界に入れていない私。

屋上に登れることを知ってる人は極わずか。

知ったとしてもバレた時のことを考えると、のぼてくる人は
ほとんどいない。

そんな中、私ともう1人、のぼってくるやつがいる。

耳に届く階段を上ってくる音。

あぁ。また来たのか。

「また来たの?来ないでって言ってるでしょ。」

『そういう時の君の顔はいつも少し苦しそうだ。』

「だからそんなことないってば。勝手な勘違い。」

私は人と関わるのが苦手だ。
多分喋れなくはない。でもものすごく疲れる。
なんで関わらないといけないのかいつも疑問に思う。

いつもこんなことを話したあと、
彼は私の少し離れたところに寝転ぶ。

今日もそうなると思ってた。

『ねぇ。世界に入ってみない?』

は?
こいつは何を言い出すんだ。
私には無理だし嫌だ。

『少しくらい見てみたくない?君がいつも聞いてる世界を』

なんで私が世界を聞いてるって思ったんだろうか。

『そんな顔してるからだよ。』

全部お見通しってわけか。

確かにみんなが生きる世界について気になることはある。

なんでわざわざ人と関わるのか。
なんで汗を流してベトベトになりながら部活をするのか。
なんであんなに楽しそうに輝いて生きているのか。

そのことを少しでも知れるなら行ってみる価値はあるのかもしれない。

具体的なことは知らない
でもきっと、こいつが全部みせてくれるのだろう。
私は彼を信じてみる。

「いいよ。少しだけ入ってみる。みんなの生きてる世界に」

『よしのった。いくぞ。』

彼は立ち上がって、私の手をとった。

その横顔はすごく輝いて見えた。

これが私の人生を大きく変えるきっかけとなったのは
また別のお話。


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